第2章 水色~黒子~
「紛失したUSBは、この石嶺さんの言う通り、△△さんの鞄の中にあったわ。△△さんは、ここに入った誠凛バスケ部のデータを他校のバスケ部に売るために紛失を装って持ち出そうとした。…だったわね、石嶺さん」
そう言った最後に、カントクの目が美由に戻る。
もちろん美由は、自信ありげに頷いていた。
「そうです」
笑顔さえ見せる彼女と、何より私は、初めて耳にしたカントクの言葉に愕然とした。
私が知らない間に、美由がそんなことを言ってたなんて。
でも、それで納得した。
(だから調べれば分かるって、美由は言ってたんだ)
私がUSBを盗んだだけじゃなく、何処かのライバル校にデータを売ろうとしてる最低な奴に仕立てる為に。
私は目の前がぐらぐらした。
ちゃんと立ってたつもりだったけど、
「△△さん、大丈夫ですか」
そう言われて、自分が黒子くんに支えられてることに気づいた私は、慌てて彼から離れた。
「…ぁ、ご、ごめ……」
「謝らないでください。それより、もう少しだけ我慢できますか?」
「え……?」
「もう少しだと、思いますから」
黒子くんは、さっきもそう言ってた。
それって。
「『分かる』のが……?」
「はい」
確かめると、黒子くんがしっかり頷いてくれる。
私はまだ不安だったけど、
「大丈夫」
言った台詞も強がりだったけど、そんな私に、黒子くんは苦笑した。
「また強がりですね。でも…今は、その言葉に甘えさせてもらいます」
「うん」
そして私はまた、カントクと美由に視線を戻した…そこでは、
「石嶺さんの言うことが本当なら、はっきり言って犯罪よね」
「だからさっきからそう言ってるじゃないですか。それなのに、わざわざそれを教えてあげた私を捕まえるなんて!」
柔らかな口調のカントクに、美由が調子付いたように喋っている。
カントクも『そうよね』と、まるで請け合うように頷いて。
「ってわけで、そろそろ白黒つけましょうか」
カントクが言い出した言葉に、美由が私をちら、と見た。
まるで自分の勝ちだと、宣言するように。
そんな中で、カントクは更に言った。
「△△さんを信じる人は、こっちへ。石嶺さんの言う通りだと思う人は、その場から動かないで」
どちらかを選べ、と、暗にカントクが言っているのは誰にも分かった。