第2章 水色~黒子~
「どうした?何か言いかけてたんじゃねーのか?あ?」
そんな美由に、部長はいつになく口が悪いというか、容赦ない口振りで。
すると、元々気の強い美由は、かちん、と来たのか、部長に言い返した。
「ガラ悪。私、後で先生に言ってやるから。そしたら部活動にも影響あるかもですね」
だけど部長は慌てるどころか、意地悪く口の端を吊り上げたと思うと、
「へえ?そりゃ面白いじゃねーか。やってみろよ」
「……え?」
「お得意の証拠もないってのに、何を言い付けるんだか知らねーがな」
「~~~~~~っ!」
完全に形勢逆転に持ち込んで、美由の言葉を封じてしまった。
でも美由はそのままじゃ引き下がらない。
部長が駄目なら、他に…とでも言うように、周りに当たり散らすように大声を張り上げた。
「USBは○○の鞄にあったんだから、証拠っていうなら、そっちでしょ!盗んだのはこいつでしょ!それを、私を無理矢理捕まえて、こんなとこに連れてきて!いい加減にしてよ!」
「いい加減にするのはそっちだと思うわよ、小娘」
すると、今度はカントクが美由に立ちはだかった。
それから一瞬だけ、カントクはこっちを振り返って。
「心配しないで。あなたはここで見てなさい。…それから黒子くん、△△さんをお願いね」
「はい」
黒子くんが私の隣で頷くのを確認してから、カントクは美由に向き直った。
「ウチの人間に妙な真似する奴は許さない、ってさっき言ったばっかりなのに。△△さんの台詞じゃないけど、もう忘れちゃうほどバカなのね、あんた。ついでに私は生意気な一年も腹立つけど、嘘で人を陥れる奴はもっと嫌い。その標的がウチの大事なマネージャーっていうなら、もう、大っ嫌いなんてもんじゃないのよね」
「な、何言って…んですか、現にUSBは……」
美由の方を向いてるせいで、私からはカントクの背中しか見えないけど、その声が初めて聞くほど冷たいことだけは分かる。
息を呑む私に、隣から黒子くんの静かな声がした。
「大丈夫です」
「黒子くん……」
「もうすぐ、分かります」
何が?って、訊く間もなく、カントクはバスケ部のみんなを見渡した。