第2章 水色~黒子~
「待ってください、△△さん」
「……でも……」
もう、今更どうにもできない。
私じゃないってどんなに言ったって、証拠はここにある。
私じゃないって叫びたくても、私はそれを証明できないし、誰が信じてくれるって言うんだろう?
悔しくて、情けなくて、私は拳を握った。
居た堪れなくて、いっそここから逃げてしまいたい。
だけど、それもできない……。
震えが止まらない手に、黒子くんの手が触れた。
でも、私は顔を上げられなくて。
そうしたら今度は、カントクが私の鞄を覗き込んできて。
「なるほど。これじゃ、取り難いわね」
そう言ったと思うと、
「△△さん。悪いけど、鞄の中身、全部出してもらって良い?」
「中身…ですか……?」
「うん。あ、USBには触らないようにね」
「え?」
「良いから、やってみて」
USBには直接触らないように、そんな注文を受けた私にはカントクの意図は分からなかったけど、とりあえず、言われるとおりにしてみることにした。
教科書とノートと、大き目なものを取り出してから鞄を逆さまにすれば、USBは簡単に床に転がった。
その瞬間、
「ほら、あったじゃん!」
ざまあみろ、と美由の顔が言ってるのが分かる。
そうして美由は、そのままUSBに手を伸ばした…けど。
だんっ!
「触んな!」
「きゃっ!?」
美由の手を遮るように、部長の片足が思い切り床に叩きつけられた。
一歩間違えば手を踏まれるところだった美由は、その足の主を睨みつけるように見上げたものの、
「なにす……っ!」
そこまで言いかけた途端、逆に部長に睨まれて、すごすごと手を引っ込めた。