第2章 水色~黒子~
ここでどうして私の鞄が必要なのか分からなかったけど、私はいつも舞台袖に置いてある自分の鞄を取りに向かった。
そうしたら、後ろから。
「例のUSB。△△さんが持ってるはずだって言うのよ」
「…………っ!?」
丁度鞄を手に取った私は、そのまま固まった。
(嘘……!?私、そんなことしてない!)
まるで覚えのないことが、自分のせいにされているのだと、この時、私は初めて気がついた。
だから美由は『早く調べろ』なんて、言ってたんだ。
私は、何もしてない。
USBなんて、隠してない。
それは絶対だ…けど、きっと、鞄の中にはUSBがある、気がする。
美由がああ言っている以上、きっと……。
(私…ハメられたんだ)
でも、いつ?
どうやって……?
私は信じられない気持ちで美由を見た。
私の視線に気づいた美由が、にや、と笑うのが見える。
勝ち誇るみたいな…どんなに粋がったって、最後には自分の方が上なんだって、私に突きつけるみたいな、そんな……。
鞄を持つ手が、いつの間にか震えそうになる。
心の中が寒くなっていくような…嫌な感じがして、私はぎゅ、と目を閉じかけた、途端、
「△△さん」
「……っ、ぇ、え!?」
振り返ると、そこには黒子くんがいた。
「大丈夫です。みんなちゃんと『分かって』ます。だから△△さんにも『分かって』欲しかったんですから」
その言葉に背中を押されるようにして、私は舞台を降りてカントクの前に戻ると、震える手で鞄を開けた。
けど、一見すると鞄の中はいつも通りで、USBなんて……。
と思ったのは一瞬、
「…………ぁっ」
鞄の隙間に、それはあった。
美由が自信満々にしていた、USBの在り処。
それが私の鞄の中…ということは……。
「~~~~~~っ」
違う。
絶対に違う。
私はこんなことしてない。
だけど、証拠はここにあって。
私じゃないっていう証拠は、何処にも……。
絶望的な気持ちで、鞄からUSBを取り出そうとする私の手を、だけど、いきなり黒子くんが止めた。