第2章 水色~黒子~
一言でいうなら、カントクは私と美由のトラブルを知っていた。
初めは美由を避けることしかできなかった私が、それをどうにかしようともがいていたことも…知っていた。
「でも知ってるのは私と日向くん…それから……」
言葉を切ったカントクの言葉を引き継ぐように、私の隣で黒子くんが声を上げた。
「僕が、二人に話しました」
「え?」
驚いて、私は黒子くんを見た。
同じクラスで、同じ委員で、図書室での出来事も聞かれてたかもしれないって考えれば、確かに黒子くんは私と美由のいざこざに気づいてたかもしれないけど。
でも……。
「どうして、黒子くんが」
「ずっと、心配でした。そんな時、△△さんが体調を崩して、僕は僕にできることをしようと決めました。他人の過去を調べるなんて良くないことだと分かっていましたが、それでも」
それでも敢えて調べた黒子くんは、私と美由との確執の原因と思われるところまで辿り着いた…と、最後には眉を寄せて、申し訳なさそうに項垂れた。
できれば誰にも話すつもりはなかったと、そう言いながら。
「でも、石嶺さんの行動はエスカレートしつつありましたし、実際に部活中、僕達が外周に出ているのを見計らって、体育館に一人でいる△△さんの元に乗り込んできたこともありました。だから、バスケ部の…少なくともカントクや部長の耳には入れておいた方が良いと思いました」
「黒子くん……」
「だけど、これは僕の勝手な判断です。本当に、すみません」
他人のプライベートを誰かに教えるなんて、やって良いことじゃない。
黒子くんはとても後悔しているように深く俯いたまま、動かなかった。
まるで、さっきまでの強引さが、嘘みたいだった。
「私に『分かって欲しい』って言ってたのは、このこと…なの?」
ここに来る前に黒子くんが言っていたことを、私は思い出した。
黒子くんが言いたいのは、そういうこと?
言いながら、私は黒子くんから少しだけ後退った。
でも、黒子くんは、この質問には即答した。
「違います」
「え?」
「僕が『分かって欲しい』と言ったのは、みんなの△△さんへの気持ちです」
「…………?」