第2章 水色~黒子~
「黒子くん!」
さっきよりも強く、痛いくらいに掴んだ私の腕を、黒子くんはいきなり引っ張って……。
「ゃっ…!?」
いきなり身体が傾いて、転ぶ、って私は咄嗟に思った。
けど、そんなことはなくて。
何が起きたのか、一瞬、分からなかった。
分からなくて固まった私だったけど、やっと自分が黒子くんに抱きしめられてることに、気がついた。
「~~~~っ!?」
びっくりしすぎて、声が出ない。
何を言ったら良いのかも分からなかった。
でも…でも……。
(なんで…こんな…っ)
「くろこく……っ」
やっと出せた声は、彼の名前。
だけど、言いかけた途端、黒子くんはもっと強く私を抱きしめた。
「…ゃっ、な…んで…っ」
『何でこんなことするの?』って言いたいのに。
「それを言いたいのは僕の方です」
苦しそうな黒子くんの声がして、私はそのまま動けなくなった。
「絵の具とはわけが違うってことくらい、分かってますけど」
(えのぐ……?)
「今の君は独りなんかじゃないのに、肝心なことは何も言おうとしない」
(なに…いってるの?)
「それじゃあ、あの頃と変わらない」
言いながら、黒子くんは少しだけ腕を緩めると、今度は私の顔を両手で包んで、覗き込んできた。
「っ!!」
あんまりびっくりしすぎて、どきどきするとか以前に、一瞬息が止まりそうになる。
目の前がちかちかして、頭がぐるぐるした。