第2章 水色~黒子~
-○○side-
留守電には、短い言葉が録音されていた。
『これからすぐ体育館裏に来て』
名前も何も言わない声だったけど、それが美由だってことは、嫌でもすぐに分かった。
体育館の裏に向かいながら、私は自分の甘さを呪った。
中学でバスケ部を辞めてから、私はすぐにメアドを変えた。
でも中学の頃の友達(今では友達とも呼べない連中ばっかりだけど)とのやりとりはメールとかLINEがほとんどだったから、電話のことは、すっかり頭から抜け落ちてた。
実際、今まであの頃の誰かから電話がかかってきたこともなかったから。
だけど……。
(美由、あんたがデータを……)
あのUSBを盗んだのは美由だと、私は直感した。
あのタイミングで、あの留守番電話。
誰だってすぐに思いつく。
(そうまでして、私に嫌がらせしたいの!?)
思わず体育館の正面から飛び出したせいで、裏に回るには建物をほとんど一周しなきゃいけない。
すっかり暗くなった道で足が取られそうになるけど、そんなこと構ってられない。
必死に走る私はいっぱいいっぱいで、他の音も気配も、何も分からなかった。
「…さん、△△さん!」
声と同時に、強引に腕を掴まれるまで、私はすぐ後ろに黒子くんがいたことを知らなかった。
「くろ…こ、く…」
息が上がって、上手く喋れない。
でも今は、行かなくちゃ。