第2章 水色~黒子~
「大丈夫です」
「黒子くん?」
「大丈夫」
言いながら、ちらりと後ろを見れば、そこには、さっきまでいたはずの火神くん達の姿が消えています。
「あの連中から逃げ切れるわけない。だから、心配いらないわ」
「逃げる…って?」
不安でいっぱいな△△さんの顔が、更に強張るように翳りました。
ついさっきまでは、あんなに楽しそうだったのに。
『彼女』を炙り出し、全てを終わらせるための計画とはいえ、何も知らない△△さんを見ると心が痛みます。
「△△さん……」
つい、その肩に手が伸びそうになる僕の前で、△△さんは机に置いてあった自分のスマホが点滅していることに気づきました。
「留守電?」
怪訝そうにしながら、△△さんは録音されたそれを聞いて…途端、再び舞台を飛び降りると、そのまま何処かに向かって駆け出しました。
「△△さん!?」
咄嗟に追い掛ける僕の背中に、カントクの声が飛びました。
「行って、黒子くん!こっちは任せて」
「分かりました」
僕は走りながら声だけを返して、△△さんの後を追いました。
あの留守番電話に、何が録音されていたかは分かりません。
(でも相手は…多分)
「石嶺…美由……」
その確信が、僕の中にありました。