第2章 水色~黒子~
「△△さん、シュートです」
「えっ!?」
急にそんなこと言われてもー!と叫びながら、△△さんはジャンプシュートを放って。
がこんっ!
外れました…が。
「だー、へったくそ!」
響いた声と同時に飛んだのは火神くん。
それから、すぐに木吉先輩までがジャンプしました。
「ぅえ!先輩?」
「取らせないぜ、火神!」
よく分かりませんが、いつの間にか同じゴールを巡って、一年生対二年生のような空気になってしまいました。
結局リバウンドは木吉先輩が取り、ボールは更に参加してきた伊月先輩へ回って、カントクへパス…のところを。
「うらぁっ!」
カットした火神くんが△△さんへ渡そうとしましたが、そこには伊月先輩が。
「悪いな、△△」
「い、伊月先輩?」
いつもの伊月先輩に比べれば、そのディフェンスもかなり加減したものだと分かりますが、△△さんには十分なプレッシャーのようです。
「火神くん」
僕が声を掛けると、攻めあぐねていた火神くんが頷きます。
火神くんはドリブルしながら僕とすれ違い様、ボールをスイッチしてくれました。
瞬間、僕は空かさず△△さんを見て、目が合った瞬間、ちら、とある場所に視線を投げました。
(△△さんが気づいてくれれば……)
僕は賭けのような気持ちで、火神くんから受け取ったボールを弾くようにパス出ししました。
そして…そこでは。
ぱしっ!
僕の視線の意味を察した△△さんが、しっかりとボールを受け止めました。
あそこはゴールにも近い場所です。
後は……。
僕と火神くんは先輩達を上手く足止め…といっても少しの間ですが、その間に、
「行け、△△!今度こそ外すんじゃねーぞ!」
「今です、△△さん」
「はい!」
力強い返事をしながら、△△さんの目がゴールを捉えました。
いつもの表情とは違う、真っ直ぐ射抜くような目と、鋭さを感じる表情。
初めて見る、とても印象的なそれに釘付けになる僕の前で、ボールは今度こそ、ゴールへ吸い込まれました。
「よっしゃー!」
「やりましたね、△△さん」
「入っちゃった……」
自分の両手を見つめる△△さんの頬は紅潮していて、目がきらきらと輝いていました。