第2章 水色~黒子~
それなりに高さのある場所から、階段も使わずに飛び降りる△△さんに驚いたのは、僕…だけでなく。
「っぶねーな、階段使えよ!」
「おい、ころぶ…って、見てるこっちがあぶねーわ」
あちこちから部員の人達の声が飛んで、でも当の△△さんは平気そうに首を傾げていました。
「これくらい、平気ですよ」
無理でも何でもなく、本当に彼女的には何てことなさそうです。
そういえば…思い出しました。
小学校の頃の記憶ですが、△△さんはかなりお転婆でしたっけ。
クラスや友達になかなか馴染めないのとは別に、そういうところはなかなか活発だったのを、何度か見た覚えがあります。
そしてそれは、どうやら今もあまり変わらないみたいです。
くすっ……。
思わず笑いが零れてしまった僕を、すぐ傍でカントクが驚いたように見ていて、視線に気づいた僕は素知らぬ顔をしましたが…遅かったみたいです。
「黒子くんて、なかなか表情変えないとこあるけど、△△さんを見てる時、結構良い表情してるのよね」
「え……」
「今みたいに」
「か、カントク……」
そうこうしてる内に、ぱたぱたと小走りで△△さんが近づいてきて、僕はカントクの発言を止めようとしましたが、カントクにはそれもお見通しだったようで。
目の前までやって来た△△さんに、カントクはボールをパスしました。
「えっ?」
「実はね、手伝いっていうより、付き合って欲しいのよね」
「付き合う?」
「そ。私も、たまには自分でやってみたかったりして」
だから、せっかくだし女同士、付き合って?なんて言いながら、カントクは△△さんからボールを奪いに行き、でも、△△さんはそれを何とか紙一重で交わすと、すぐ傍にいた僕にパスしました。
「………っ」
まさか△△さんからパスが来ると思わなかった僕は、一瞬固まりかけましたが、
「リコ、今だ!」
離れたところから部長の声がして、カントクが僕のボールを狙っているのが分かりました。
僕はそれをかわしながら、再び△△さんにパスを回し、カントクが△△さんの元へ行くのを遮りました。