第2章 水色~黒子~
歩きながら、でも僕を見ないままで、まるで自嘲するような表情を浮かべていました。
「迷惑っていうか、変なとこっていうかさ。昼休みも、聞こえてた…よね?」
『昼休み』…それがあの『図書室』でのことを指しているのは、すぐに分かりました。
「はい。少しだけですが」
本当は、もっと前から聞いていました…なんて、もちろん言うつもりはありません。
そんなことをすれば△△さんは余計気にしてしまうでしょうし、結果的に盗み聞きしてしまった僕としても、多少の後ろ暗さがありました。
でも△△さんは、まるで自分自身を責めるような…卑下でもするような様子で、早口で捲くし立てました。
「だよね。私、あの時、ちょっと変だったっていうか。黒子くんも、きっと引いちゃったよね。けど私、平気だから。黒子くんにも、迷惑かけないようにするから」
だから、ごめん…と、更に言い募ろうとするのが堪らなくて、僕は△△さんの言葉を遮ってしまいました。
「僕は引いてなんていませんし、△△さんのことで、迷惑だと思ったこともありません」
全然平気じゃないのに『平気』だと言う。
一人で『大丈夫』だと言わんばかりに、離れていこうとするのが分かる。
それが、僕にはどうしようもなく、苦しくて。
もっと頼ってくれたら良いのに。
一人では不安だと、言ってくれたら良いのに……。
生来の性格なのか、それともやはり、中学でのことが原因の一つなのか、それは僕にも分かりません。
でも、今の△△さんには友達だってちゃんといるのに、それでも結局、石嶺さんとのことのような、重大なところでは誰にも頼らずに一人でどうにかしようとしている。
(こんなの…僕には見てられません)
「君は…どうして……」
胸が痛くて、引き攣るように苦しくて、僕は△△さんとの距離を詰めました。