第2章 水色~黒子~
僕は饒舌なタチではないので、たくさんの人と話すということはあまりありませんし、そもそも得意ではありません。
それでも僕の中では、△△さんとは比較的たくさん話しているという自覚がありました。
△△さんと話すのは、僕にはとても楽しいことで、だからその変化にも、すぐに気がつきました。
初めは、まだ体調が思わしくないのかと心配になりましたが、見ていると、どうもそういうわけでもなさそうです。
火神くんとは普通に話してましたし、部活でも普通に見えました。
ただ、僕と話す時にだけ、上手く言えませんが、何処かぎこちないような…そんな感じを受けました。
ということは……。
(僕は、何かしてしまったんでしょうか)
それにしては、怒っているとか、嫌がられているような感じは受けなかった…とは思いますが、やっぱりいつもとは違う気がします。
それとも、僕の気にしすぎ…でしょうか。
考えながら隣を見ると、少しだけ離れたそこに、△△さんがいました。
女の子の…△△さんに丁度良い歩調が分からなくて、少しゆっくり歩くようにしてみましたが、見たところ大丈夫そうで、ちょっと安心しました。
△△さんが俯きがちなのは、気になりますが。
「今日は、お疲れ様でした。帰りが遅くなってしまいましたが、お身体は大丈夫ですか?」
「え?あっ…大丈夫だよ、うん」
声を掛けただけで驚いた顔をした△△さんは、それから無理に笑いながら僕に答えてくれましたが。
(顔が強張ってるのが丸分かりです。△△さん)
すると、△△さんはそんな自分自身をフォローするように、でもやっぱり何処か落ち着きのない様子で喋り始めました。
「私こそ、ごめんね。私のせいで、練習も途中で切り上げさせちゃって」
「そんなこと、気にしないでください。僕も帰ろうと思ってましたし」
申し訳なさそうにする△△さんに、僕はきっぱり言い切りました。
△△さんを送るのに、カントクに名乗り出たのは僕自身の意思です(△△さんは知らないようですが)。
だから△△さんが、そんな風に感じる必要なんてないんです。
だけど、△△さんは。
「でもさ、何か…私って最近、黒子くんに迷惑ばっかり掛けてるし」