第2章 水色~黒子~
私だけ居残りって初めてかもなあ、なんて思ってたら、部活が終わったはずの体育館には、まだ何人も…っていうより、ほとんどの部員が残って、自主練していた。
いつもの私は部活が終わると、(いくら休憩を入れても、長時間作業は禁止ってカントクに言われてたから)帰っていたけど。
みんなは、こんな風に残ってたんだ。
(知らなかったな)
そういえば確かに私が帰る時も、誰も帰る気配がなかったけど、あれはそういうことだったんだ。
今更気がつきながら、私はやっと終わったコピーデータをカントクに渡した。
「お疲れ様。△△さんは、もう帰りなさい」
「はい。それじゃ、お先に……」
「あ、ちょっと待って」
「はい?」
素直に鞄を持った私を、カントクはいきなり呼び止めた。
「もう暗いし、誰か一緒に帰った方が良いわね」
「え?」
窓の外を見れば、確かに外はすっかり暗くなってる。
まだそんな時間じゃないと思ってたけど、段々、陽が短くなってるんだなって、改めて実感した。
秋になって、その後には冬が近づいてくる。
そして、そこにはWCがある。
その為に、みんなは練習してるんだから。
「私なら一人で大丈夫ですから」
暗いって言っても、まだ遅い時間じゃないし。
だから…って、言おうとしたのに。
「ずえったい、駄目!何かあったらどうすんの」
「何にもないですってば」
「あってからじゃ遅いのよ!」
何か…こういうフレーズ、まるでお母さんみたい、とか一瞬思ったけど、言ったら怒られそうだから、これは内緒。
でもだからって、やっぱり誰かに送ってもらうなんて悪いし。
どうしよう、って悩んでる間に、
「それでは、帰りましょう。△△さん」
「は、は…い?」
着替えを終えて、すっかり帰り支度をした黒子くんが、いつの間にか私の隣にいた。