第2章 水色~黒子~
(今の、変じゃない…よね?)
普通にしなくちゃって思うけど、やっぱりなかなか上手くいかない(手に触るとか無理だし)。
けど、ちゃんとしなくちゃ。
そうは思っても、昼休みの図書室のことは、自分からはさすがに言いにくいし。
何だか、何を喋ったら良いか分からなくて、私は困った。
黒子くんに対して、今まではこんなことなかったのに。
何も喋らなくたって、居た堪れない空気とか、そんなの、感じたことなかった。
でも今は……。
私は自分の足元に視線を落とすしかなかったけど、黒子くんは違った。
「昨日は二号にお菓子をありがとうございました。二号もすごく喜んでました」
でも与えすぎは良くないので、残りは隠してあります、なんてことまで続ける黒子くんに、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ。一度で食べるには、二号には多かったね。でも、あれはあんまり日持ちしないみたいだから、早めに食べさせてあげてね」
「そうなんですか。分かりました。また今日にでも、二号にあげることにします」
「うん。そうして」
あれ?
私…黒子くんと普通に喋ってる。
だって、黒子くんがあんまりいつも通りにしてくるから……。
でも…何で?
(何で、黒子くんは……)
「△△さん?」
「え?」
「やっぱりまだ、本調子じゃないんじゃありませんか」
「え、あ、平気だよ」
「でも、今も何だかぼんやりしていたようですし…・・」
「そ、それは……」
それは、何で黒子くんは普通なのかなとか。
引いちゃってないのかな、とか、考えてたからで…なんてことは言えないし。
だからって『何で黒子くん普通なの?』なんて、余計訊けるわけないし。
でも本当に、何で黒子くんは普通なままなのかな。
それとも、昼休みのあれのせいで、逆に気を使わせてるとか?
(あるかも……)
私は心の中で頷いた。
(黒子くん、優しいからなあ……)
引かれるって思ってたから、そうじゃなかったのは嬉しいけど。
「私なら、全然大丈夫だし。黒子くんも、気にしないで」
体調のことだけじゃなくて…もう、全部。
そのつもりで、私は言った。
上手く笑える自信もなかったけど、ちょっと笑ってみたりもした。
こうやって普通に話せるだけで、私はもう十分だから。