第2章 水色~黒子~
中でも黒子くんの姿をつい見ちゃってる自分に、私は、はあって溜息を吐く。
(何となく目がいっちゃうとか、駄目だな、私……)
時々そんなことを考えてしまいながらも、私はいつもより速いペースで入力を続けていた。
(えっと、今ここだから、せめてあと……)
今日はこの辺まで…って、いつもより高めの目標設定をした私は、うっかり休憩するのを忘れてた。
そうしたら。
「くぅ~~ん」
すりすり…っ。
「ひゃっ!?」
甘えるような声と一緒に、何かが足に触ってくる。
これって……。
「二号!」
こんな風にしてくる相手なんて、考えなくたって分かる。
「休憩しろってこと?」
二号は私に休憩させるかのように、よくこうしてやって来る。
「きゅーん」
甘えた声を出す二号が可愛くて、私は床に座り込みながら抱き上げた。
「いい子だね、二号。そういえば、あのお菓子はもう貰った?」
黒子くんに直接訊けない私は、二号にそんなことを言ってみる。
返事があるわけないの…に?
「とても美味しそうに食べてました」
「ひゃっ!?」
黒子くんは、よく存在を忘れられるとか、気づかないとか言われてるけど、みんなが言うほどには、私はそれを感じたことがなかった。
私には普通に見えるというか、ちゃんとそこにいるって、大体分かることが多かった…んだけど。
(び、びっくりした。今のは全然、気がつかなかった)
二号に気を取られてたせいもあるけど、本当に、全然気がつかなくて、私は思わず二号を抱きしめたまま尻餅をついてしまった。
「くーん?」
心配してくれるみたいに、二号がほっぺを舐めてくる。
「大丈夫だよ、二号」
ありがとね、って言いながら、私は二号の頭を撫でた。
そうしたら、
「すみません。びっくりさせてしまって」
「え…あ、う、ううん。べ、別に、平気」
すぐ上から聞こえた黒子くんの声に、私はあわあわしてしまった。
(何か…変だったかな。で、でも、びっくりしちゃったのは本当だし)
だからちょっと返事がおかしくても、声が裏返っちゃってても、多分大丈夫…なはず。
二号を床に下ろして立ち上がろうとする私に、黒子くんは手を差し出してくれたけど。
「大丈夫だから」
別に転んだわけじゃないし、平気だよ、って顔して、私は黒子くんからこっそり距離を取るように立ち上がった。