第2章 水色~黒子~
カントクはああ言ったけど、やっぱり少しでも穴埋めはしたいし。
それに作業に集中すると、何も考えずに済んで、ちょっと楽だったりもするんだよね。
図書室のあれだけじゃ、多分まだ終わらないんだろうなって思う美由のこととか(だからってただ避けるのはやめようって思ってるし)、あとは……。
(黒子くん……)
みんなと一緒に練習してる黒子くんは、全然いつも通りに見える。
っていっても、あれから全然喋ってないんだけど。
そういえば、何故か午後の授業に遅れてきて、先生にも怒られてたけど、黒子くん、何も言い訳してなかった。
図書室の鍵を返しに行った私より戻るのが遅いって、どうしたんだろうって思ったけど、自分から話しかけるとか…できなかったし。
こうして黒子くんを見てると、やっぱり、どきどきする。
見てるだけで…なんて、前はこんなことなかったのに。
でも…昼休みの時は違った。
誰も彼も、もうどうでも良いって思った。
そんな私に、一応、付き合いだけは長いはずの、あの美由でさえ黙り込んでたのに。
黒子くんが、引かないわけない。
(考えても、意味ないか)
委員も一緒で部活も一緒。
ついでにクラスも一緒だから、完全に引かれちゃうのは結構痛いけど。
だけど、その方がかえって私も、早く諦めがつくかもしれないし…もし、そうできなくても、距離を置いて見てるだけなら、許してもらえる…かな。
すっかり定位置になった舞台上の机は、みんなが練習してる方に向いてるから、私は時々、入力作業をしながら、ディスプレイの向こうの風景を眺めていた。
視界いっぱいに広がるのは、バスケ部みんなの姿。
部活前とはそれぞれ違う、何処か鋭い顔つきは、男の子っていうより、男の人というか、精悍…っていうのかな。
とにかく何だか違う人達みたいで、不思議な感じ。
それから耳には、きゅきゅっ、って、バッシュが床を鳴らす音とか、ドリブルの音…それにバスケ部のみんなの声がいっぱい飛び込んでくる。
入力作業を始めたばっかりの頃は、慣れない音だらけで集中できないかも…なんて思ったこともあったけど。
今ではこれも、BGMみたいな感じ。
ないと逆に調子が狂っちゃいそう…って言ったら、ちょっと大袈裟かもしれないけど。