第2章 水色~黒子~
まだ何処かでトラウマを引き摺っていたとしても、△△さんは、ちゃんと前に進もうとしている。
でも…この石嶺さんという人は……。
僕は、ふと奇妙なことに気づきました。
今の彼女は『友達』を否定するような言い方をしていました。
なのに、
(△△さんのことは『友達』だと言っていました)
確かにそうだった、と僕は思い出しました。
図書室でも…教室まで押し掛けてきていた時も、彼女は執拗に△△さんに『友達』という言葉を使っていました。
(矛盾しています……)
『友達』なんて…と言いながら、△△さんにはそれを求めているような……。
(何か…おかしい気がします)
そう考えて、僕はやはり今日の昼休みにカントクが教えてくれたことを思い出しました。
『黒子くん、ちょっと』
『はい?』
『君が言ってた演劇の同好会だけど、そんな申請、提出されてないわよ』
『え?でも、部活じゃなくても、設立するには申請が必要なんじゃ……』
『そ。だから、そもそも同好会なんて作る気ないんじゃない?』
『作る気が、ない?』
それは、僕が石嶺美由という生徒が演劇の同好会を作ろうとしているらしいこと、そしてそこに△△さんを引き込もうとしているらしいということを話した上で、同好会に関する情報をカントク(カントクは生徒会副会長もしているので、こうした情報は簡単に調べられるそうです)にお願いしていたことの報告でした。
でも、その結果は、石嶺さんは未だに同好会の申請を出していない…というものでした。
規定の人数が集まらなかったのかとも思いましたが、カントクが言うには、この学校の同好会設立条件の人数は代表者の他一名、つまり二人いれば作れるということでした。
だから頭数がネックになることはありえない、とはカントクが言っていたことですが。
だとすると、どうして石嶺さんは同好会を作ると言いながら、実際は何もしていないのでしょうか。
(やっぱり、引っ掛かります)
石嶺さんは最初、演劇の同好会を名目に、△△さんに近づきました。
でも△△さんは石嶺さんの誘いを拒み、肝心の同好会も存在していません。
(もしかして……)