第2章 水色~黒子~
僕も後に続きましたが、それも彼女はお気に召さないようでした。
「ちょっと、ついてこないでよ!」
「教室は向こうなので、仕方ないと思いますが」
教室のある棟は同じ方向にあります。
クラスが違っても、同じ方へ向かうのはどうしようもないことなんですが。
僕は元々、彼女に良い印象を持っていませんが、今日のこれは(図書室のこととか色々と)、イラっとするとか、そういうものを超えていました。
だから…というわけではありませんし、本当はここまでするつもりはなかったんですが……。
僕はすぐ前にある、石嶺さんの腕を掴みました。
「…ゃっ!?な、何!?ふざけないでよ!」
驚いて立ち止まった石嶺さんは、睨むように僕に振り向きました。
「ふざけてません」
言い返す僕を、彼女が睨みつけます。
でもそうやって強がりながらも、腕を掴んだ瞬間、石嶺さんがびく、としたのが手を通して伝わってきました。
今日初めて会った相手に、いきなり腕を取られたら驚くのも無理はありません。
それでも僕は、腕を離しませんでした。
彼女の制服の上から、あまり力は込めずに、でも逃げられない程度の強さで。
火神くん辺りに比べたら非力な僕ですが、女の子の腕を掴むくらいはできます。
僕を睨んだまま動かない彼女とその場にいたのは、ほんの僅かの間でしたが、そうしている内に、いつものように担当の先生が図書室の確認に来るのが見えました。
近づいてくる先生に、先に気づいたのは僕でしたが、すぐに石嶺さんも気づいたようで。
「離してったら!」
先生にアピールするように、彼女は大声を出しました…が。
「おい、何をしてるんだ」
先生が僕と石嶺さんに気づいた時には、僕は彼女から手を離していました。
石嶺さんは自由になった途端、先生に駆け寄りました。
「先生、この人が!」
「ん? どうした?」
石嶺さんの訴えは当然、僕が彼女の腕を掴んで離さなかった、というものです。
「私、何もしてないのに、この人がいきなり……」
怖かった、と訴える彼女を見て、先生は険しい顔で僕を見ました。
「君は……?」
「黒子といいます」
「そうか。では、黒子くん。彼女の言ったことは本当か?」
双方からの言い分を聞こうとする先生に、僕は首を振りました。