第2章 水色~黒子~
石嶺さんの影響で、一時は体調を崩した△△さんです。
だから、△△さんに石嶺さんを近づけるなんて、僕には考えられませんでした。
でも…今日の昼休み、荷物を片付けて引き上げようとした時、△△さんの事情(全部じゃありませんが僕が話しました)を知っているカントクは、僕に言いました。
『同じ校舎にいて、相手はしつこく会いに来るわけでしょ。高校三年間、それをずーっと避け続けるなんて、はっきり言って無理よ』
何より、その為に△△さんが精神的に参ってしまう可能性も高い。
断言した言葉はつまり、一度二人をぶつけてみるべきだと、そう告げていました。
僕には、とても賛成できませんでしたし、もしそんな日が来るとしても、今はまだ早すぎると思いました。
なのに図らずも今、室内ではそれが現実に起こっていて。
今までのこと、昼休みのカントクの言葉……。
色々なことを思い巡らせながら、僕は図書室から聞こえてくる声に耳を澄ましました。
二人の衝突…というより、爆発した△△さんの声が、初めは石嶺さんを圧倒しているようでした。
でも途中から、石嶺さんも段々と口調が激しくなって、同じように言い返し始めました。
「何でそんな言い方すんの!?全部私が悪いみたいじゃん!私だって、あの頃すごく悩んだんだから!」
「悩んだから何?『私は佐奈の友達だからね』とか言っといて、みんなと一緒に私のこと無視して笑ってたくせに!」
二人の感情がどんどん昂っていくのが、ここにいても伝わってきます。
(△△さん……)
中の様子を窺いながら、でもこれ以上は聞いているのが辛いような、そんな気持ちになった時でした。
「ふざけんなっ!」
ばんっ!
何かが机を激しく叩きつける音がしました。
僕は一瞬、びく、としながら、ふと時計を見て…息を吐きました。
(そろそろでしょうか)
昼休みも、もう終わります。
チャイムが鳴った後、図書室の施錠を確かめる為に、担当の先生が必ず巡回するのを、図書委員をしている僕は知っていました。
もちろん△△さんも知っているはずですが、今はきっと、それどころじゃないでしょう。
僕は今度こそ図書室のドアに手を掛けると、そのまま中に踏み込みました。