第10章 風
先ほどのカメラマンはもう居なくなっていた。私の写真などいらないだろう、きっと処分するはずだ。
「木ノ葉の中でも、が本気を出せば、くの一では、一、二を争う実力があるかもな・・・それほどの修羅場を常に潜り抜けてきたな、違うか?」
「ふふ、そんな違いますよ。私の実力なんて木ノ葉の方に比べたら、ほとんど掠れてしまう。素晴らしい忍達ですね。だからこんなに活気溢れているんですね。」
とにかく急いでこの場を去りたい私は、後ろから漏れるガヤガヤした会話を消し去るように、上っ面の会話をペラペラ喋っていた。
背後の騒がしい人集りから、いち早く逃げるように、歩く速度を少し上げ宿に向かった。
カカシとこれでお別れだ。
もう二度と会わないのだから
今、手を振り、
サヨナラをしたらいいのに
私は頑なに、それを拒否をする。
せめて最後ぐらいは・・・と、そう思った。
でも出来なかった。
身体が、心が、全身が、拒絶をしている。
振り返る勇気なんか
一つも持ちあわせていない。
カカシの疑心に満ちた瞳を
もう一度見る勇気が残っていなかった。
せめてカカシとの楽しかった思い出だけは綺麗なままで連れて帰りたい。
心優しいカカシに、振り返れば見せてしまう。
嘘をついた自分を
偽りの自分を
どうしても、それが私にはもう耐えられない。
私はこれ以上傷つきたくない。
本当にただ、それだけだった。
それだけで私はこの時
カカシを最後まで見なかった。
この時どんな表情をしていたかなんて私は知る由もなかった。