第10章 風
やってしまった……と、落胆し、カカシを見れば、目をまん丸に開けて、疑惑が増えた人間を、穴が空くほど見ている。
そりゃそうだろう……失敗したなぁ……
少し心が近づいた気がしたのに一瞬でまた、離れていく。
どん底に落ち込んでしまい、カカシと目が合えば、思わず私は視線を逸らして下を向いていた。
「……身体が勝手に動いていたね。やっちゃった……」
木ノ葉隠れ里の人間に、すべてを任せておけば良かった。
だけど、私が術を発動しなければ、多分間に合わず、怪我人が出ていたはずだ。
それでも、里外の人間が、いきなりしゃしゃり出ていい場面ではなかった。
ここは、木ノ葉隠れ里のテリトリーなのだから、侵してはいけない。
木ノ葉の忍が対応するのが筋であった。
道理にかなった方法であった。
ましてや、私は身分が怪しい人間だ。
お礼なんか言われるわけが無い。
里を脅かすスパイではないか…、
何の目的だ……
皆、目が物語るように、ただ私に注目している。
里を早めに出ないと行けない状況になってしまった……それでも、私は誰も怪我人が出なかったことに、心の底から安堵している。
「に皆が注目しておるな。」
「そうだね。邪魔しちゃ悪いし、帰るね。」
"帰るね"
どちらの意味も込めて喋っている。
宿と藍ノ里の両方を示す。
針のむしろの視線の中で、息苦しく感じながらも、私はどうにか呼吸をしていた。