第9章 アカデミー夏祭り
カカシはモデルだ、モデルだ、と頭で何回も言い聞かせながら、うちわに描くが、まー似てない。失敗だ。
「あーーーもう一回!!!動かないでね?」
「動いてないよ、一度も。」
リベンジで、次は真剣だ、と気合を入れて強い目線でカカシを見つめ、ペンを走らせる。
その描いていく様子を子供達が、私の背後から覗くように見ている。
本気の作品を描いていけば、ギャラリーは溢れ、若い女性の気配が横からくれば、驚いた声を上げる。
「っ!!あー、カカシ先生じゃないですか、上手ですね!凄い!」
真剣にカカシを見て描く私は、一切振り向かず、ひたすらペンを動かし、最後にサラッと色を塗れば完成だ。
「いぇーい!!ほらバッチリでしょ、カカシ、完璧だわ!」
カカシに見えるようにうちわを持ち、嬉しくて笑顔で、ハイっと渡した。
彼は固まり、目を大きくあけ私を見て、すぐさま目を横に逸らしてしまった。
「…カカシ?これ、最高傑作だと思わない?」
伺うように聞くが、目を合わさずにうちわを受け取り、見ながら会話を始める。
「…あー似てるね。うん、上手いよ。」
「そうでしょ、そうでしょ!私、こういう絵を描くのが得意なのよ。カカシにそれあげる!バッチリよ。」
「うん、ありがとう…」
口元を急に押さえて、席を立つカカシに、
先ほどの若い女の子が声をかける。
「カカシ先生ーー、どうしたんですか!顔が赤いですよ!」
「うるさいよ。」
肩の高さまでのピンクの髪の若い女性に声をかけられるが、カカシは無視してスタスタ歩いて行ってしまった。
「先生?カカシ…先生だったんですか?」
「はい、私の先生だったんです!六代目になったけど、先生は先生ですから。カカシ先生、何だか照れてましたね。」
キラキラフレッシュな女の子は、サクラというらしい。
先生と呼ばれていた最初を思い出し、カカシを見つめていた。
「え??あ、あれは照れに入るの?よくわからないな…あはは。」
とりあえず笑って恥ずかしい気持ちを誤魔化していた。