第8章 夜の木ノ葉隠れ里
「……やっぱり凄いよ……」
それでも私の見つめる先が、夜空を向いてしまう。
美しい色んな宝石を空一面にばら撒いたように輝き、小さな星でさえ、あんなにくっきり素晴らしくピカピカ光っている。
これが普通なんて、信じられない。
こんな空を毎日見れるなんて、最高だと思う。木ノ葉隠れ里の人間は日々贅沢な生活を送っているようだ。
「上ばっか見てると転けるよ?」
隣から心配する声が聞こえるが、それでも星空から目が離せない。
「うん、そうだね……天の川がまだ見えるね……教科書でしか見たことないから……あれが…アルタイル、あれが、なんだっけ…ベガ…?…あれが……」
ずっと一人でぶつぶつ昔の習った星座の話を思い出しながらつぶやき続ける。
「ここでこんなに綺麗なら、見晴らしが良い場所はもっと凄そうね。カカシ、明日ね、時間があったら連れて行ってくれない?」
「スケジュールが合えばね。」
カカシに笑いかけて見ると、カカシも笑ってくれていた。
「ま、今日も星が綺麗だけど、冬の方がもっと綺麗に見えるよ、やっぱり。」
その声に思わずカカシに、信じられないという驚いた表情を向けてしまうが、カカシは空を見ている。私も再度壮大な夜空を見上げた。
「これ以上に、綺麗に見えるの??凄いね、世界は広いよ。私は何にも知らないな。見てみたい、どんなに凄いんだろ……冬の夜空を見上げてみたいよ。」
叶わない願いを言葉にしている。七夕は終わったけれど、短冊に願い事を書けば良かった。
この空が冬になる頃には、私はここにいないはずだ。そんなに長くいられないんだから。
「がずっとここにいれば見れるよ?」
「ふふ、本当だね、カカシ。」
涙が溢れそうになるぐらい優しい言葉が耳に聞こえ、優しい答えを口にしていた。