第7章 一楽
カカシが見えなくなるまで、私はニコニコ両手をあげて左右に振りながら、バイバイしている……、が!彼は一度こちらをチラ見しただけでスタスタ歩いて行く。まーなんて白けたお方なんでしょうか。
普通、もっとこう…何回も振り返ったり、別れを惜しんだり、そういう素ぶりをしてくれても良いのに……何もしてくれない。
あんな事いっぱいしたのに……彼にとっては大したイベントでは無いらしい、やっぱりガッカリしてしまう。
だけど、さっき頭ポンポンしてくれた。
来てくれるのかな、つい期待してしまう。
先ほどから私は変だ、おかしい。
離れていくのを私の方が、何故か寂しく感じている。私の事なんか、全然気にしないで、スタスタ歩いていく後ろ姿を、黙って名残惜しく見ている。
中々、上手くいかない、難しい。
ミイラ取りがミイラになるだけは避けたい、気をつけないと……。
本当にカカシは用心深いし隙が無いし、観察力、洞察力が素晴らしい。
我が敵ながら、天晴れをあげよう。
カカシが小さく見えなくなり、やっと大きくハーーっと息を吐く。
道の邪魔にならないように横に寄り、目を閉じ、気配を調べる。
やはり影分身がいて監視をしているようだ。さすがカカシ様、さすが六代目、私はこんな強敵に会えた事を、心より感動している。
どうやったら私に惚れるんだろう、今までニコニコすれば、だいたいコロッと上手くいくのに、まったく…難解な問題だ。
「んーーーー眠くなってきた。帰ろうー。」
独り言を言い、私もスタスタ歩いて宿に向かう。
ガヤガヤ活気ある街を見つめながら、ひたすら、頭の中でカカシを思い浮かべていた。