第1章 藍ノ里
里一番の英雄は、私の従兄弟だ。
身長が高く、顔立ちも整い、見た目も派手でよくモテる男で周りにはいつも女がいる。
私は、ああいうチャラチャラしたいかにも、遊んでますよー、という人間が大っ嫌いで、従兄弟だとあんまり知られたくなかった。似てると言われるのが心底嫌いだった。
「、コレが終わったらワシの所へ来い。」
里の英雄の父親、そして私の叔父さん、そして藍ノ里の長である人間が、私に声をかける。
何の話か知らないが、喪主は忙しそうだが、私に話があるらしい。
「面倒くさいーー……」
叔父さんがどっかに行ったのを確認して呟けば、ついに怒りが最上級まで上がった祖母様に背中を叩かれてしまった。
ベシッ!!
「アーーホ!里の長になんて口聞いてんのよ、アンタわーー。大事な話やねんからちゃんと聞いとかなあかんで?」
「いっ…たー!何すんのよ、ばあちゃん、痛いねん、手加減してーや、ほんま。」
痛いわーと、ワザとらしく自分の背中をさすれば、祖母は大きく息を吐く。
「は、ホンマに残念な子やわ。こんなベッピンで見た目も良くて、可愛いー産んでもろたのに、中身があかん。死んだあの子が可哀想やわ。結婚出来へんで?ちゃんとせな。」
私の両親は4歳ぐらいで大戦時に命を落とし、祖母に育ててもらった。
「結婚なんかしたくないねん、疲れるやん、他人なんかと住むのはしんどい。
ばあちゃんとずっと住むからえーやん。」
私はニコニコ言うが、コレが不味かったらしく火に油をドボドボとかけてしまったようだ。見た目が綺麗なのに、目がお怒りだ。台無しだ。
「はーーーー?は、何やねん、もっと勉強せなあかん!後から結婚したくなっても嫁の貰い手あらへんなるで。アンタもう27歳やろ?早よ見つけんかいな、相手ー。このバカたれが。ホラ、長が呼んでるぞ、行ってこい。」
背中をベシベシ叩かれながら重たい身体を上げて長のいる部屋へ向かった。
この時、何も考えずに部屋に入った事を後から悔やむ自分がいた。