第3章 出会い
「ま、待って下さい!あの…な、名前は?貴方の名前を教えてくれませんか?」
縋るように名前を名乗る事を求められたが、情報を簡単に渡すわけに行かない。
偽名も中々咄嗟(とっさ)に出てこない。
「あ、えっと……」
「お願いします。今オレは貴方から離れられない。名前を、どうか…どうか…オレに、教えてくれませんか?」
この男は何故か、何度も何度もずっと必死になって名前を聞いてくる。あまりの気迫に押されて思わず、ポロっと名前を言ってしまっていた。
「……」
「!……………ですね!、……本当に素敵な響きのお名前ですね。」
彼は頬を赤く染め、ウルウルと涙目になりながら微笑み、何度も何度も私の名前を繰り返し言って嬉しそうに私を見ている。その姿にドキドキしながら彼の温かい声を聞いていた。落ちついた声の持ち主のようだ。
「さん…今日お会いした事を心より幸せに感じます。どちらに行かれるご予定なのですか?」
「木ノ葉の隠れ里に。色々旅して回っているんです。」
「えっ……?」
その時、遠くからこの男を呼ぶ声が聞こえ、肩を掴んでいた手が離れた。
逃げるチャンスが来た。
「先生ーーーー、やーっと、追いつきましたよー。いきなりコレ脱いで走り出すからビックリしますからね。帽子まで脱いじゃって……オレは荷物持ちじゃありませんよ。」
「おー、悪い悪いー、シカマル、だって急いで駆け寄りたかったんだよ、こんなの邪魔でしょ?走れないよ。」
彼がシカマルという人間に、目を逸らした瞬間、
今しかない!と思い、急いで瞬身の術の印を結んでその場を咄嗟に離れた。