第1章 自責の念
ナイフはリヴァイの頬をかすめ、赤い血がどろりと垂れてくる。
「てめえ…」
リヴァイは頬を伝う温い血を拭った。
アルバは壁際に寄り立ち、荒い息をしながら近寄らせまいとナイフを構える。
その妙な構えを見て、リヴァイは一歩一歩アルバに近寄り聞いた。
「ナイフの扱いは誰に習ったんだ?」
「何故そんなことを聞く」
また一歩近づく。
「寄るな!」
持つ手に力が入る。
接近戦ならまだ、戦えるかもしれない。
どうせ死ぬ。ならばいっそ…
「何故かって 教えてやろうか?」
リヴァイは歩みを止めた。
「俺も同じだからだ」
ナイフを構えたリヴァイの出で立ちはアルバの持ち方そのものであった。
パズルのピースが埋まるように、アルバは目を丸くして動けなくなってしまった。
「まさか…」
リヴァイは距離を詰めて、棒立ちのアルバへ足蹴りを食らわせる。
声も出せないほどの衝撃に、アルバはその場へへたり込み、思わずナイフも手放した。
蹴られた脇腹を片手で抑えると、リヴァイに髪を掴まれ力任せに顔を上げられる。
「お前には聞きたい事が山ほどあるが…」
「っ…」
「ケニーの居場所はどこだ」
身体の内側まで響くような足蹴りを食らったアルバは、これだけの辛酸を嘗めたのにも関わらず、慈悲も容赦もない人類最強の男に少なからず恐れを抱いた。
口の端から血を流し、息も短くしながら、技量で完全に劣っていると認めざるを得なかった。
しかし、ここで尻尾を巻いて逃げ帰ったとする。
憲兵からは逃れられないだろう。地下街へも帰れない。
地上で暮らすことも出来ない。
アルバには何もなかった。
何も答えずにリヴァイを見上げたまま睨むことしか出来ないアルバを見て、痺れを切らしたリヴァイは頭の髪を掴んだまま強引に口付けをした。
「んっぅ!」
荒々しく舌を入れて口内を暴れ回る。
アルバは抵抗をするが、全てリヴァイのもう一方の手で防がれ、ねぶり尽くすように熱い舌が絡まり、アルバの舌が追い出そうとするほど、余計にピチャピチャと音を立てる。
呼吸さえも許されないくらいの口づけを何度もして。
「お前の嫌がることはこれか」
ゾッとする台詞を聞いてアルバは震えた。