第5章 青色ドロップ
襟元が緩い白いシャツの下に淡い色の水色のシャツを重ね、薄い桃色の七分丈ネルシャツを上に羽織り、カーキ色のズボンを履いている。
名前が予想していた幸村の私服とは違って、やんちゃなーー今時の男の子といった服装だ。見た目と服装のギャップがあって、名前は胸がキュンキュンと疼く感覚に頬が緩むのを止められなかった。
しかし、いつまでもニヤケている訳にもいかないのでひとつだけ咳払いをしたあとゆっくりと幸村へと向き直った。
青空の下、いつものように凛と背筋を伸ばし立っている幸村は、いつもの儚げで綺麗な彼とは違って見えた。年相応の格好をしている幸村に、何故だかぐっと距離が近くなったようなきがして名前は頬を緩ませた。
「今来たところだから大丈夫だよ」
満面の笑みを幸村に向けながら、そう言葉を紡ぎ相手の言葉を待ったが何故がうんともすんとも言わない。
「幸村くん?」
「………」
些か目を見開いたまま、名前を見つめ固まっている幸村にひらひらと手を振ってみるも反応がない。
いったいどうしたのか?と眉を寄せつつ不安になっていると、我に返ったように幸村は大きく肩を跳ねさせた。
「あっご、ごめん…俺、ぼーっとして…」
「う、ううん…良いけど。大丈夫?疲れてるんじゃない?」
「いや、違うよ。そうじゃなくて……その、あまりにも、名前が可愛かったから」
「えっ…」
頬を上気させ照れくさそうに言ったあと、ふんわりと笑みをこぼしそう言った幸村。
名前は言われた言葉の意味を理解する事が一瞬出来ず、目を見開き固まったあと、頭の中でゆっくりと幸村の言葉を反芻させた。ほんの少しだけ間をあけてから、言葉の意味を理解し一気に頬が上気していくのが名前は自分でもわかった。
紅潮した頬を隠そうと両手を顔に持っていけば、ゆっくりとした動作で幸村の腕があがり、その両手をそっと外させた。
「お姫様みたいに可愛いね」
身を屈め顔を覗き込んできたかと思えば、さらりと言われたキザな台詞。名前は更に顔を上気させ、なにか言葉を紡ごうと開いた唇は幸村の唇によって塞がれてしまった。