第5章 青色ドロップ
ーー幸村くんに可愛いって思ってもらいたいもんね!
ベッドの上に並んだ色形様々なお気に入りのその子達を眺め、そう大きく頷いた。金曜日の夜、散々考えたコーディネートは結局決まらないままだった。
雨が降ったらヒールは履きづらいし…服もちょっと変えないと。
風が強い日だったらスカートやワンピースは…。
あんまり派手すぎるのは幸村くん好みじゃなさそう。
幸村くんの好きな色にするとか?けど幸村くんの好きな色知らない…。
そんな事をぐるぐる考えていて、結局決まらないデート当日を迎えてしまった。
しかし出掛ける時間までまだまだ時間はある。
ーーじっくりコーディネート考えて、お化粧して、あと髪型アレンジも…。
全身が映る鏡の前に立ち、あっちでもないこっちでもないと体にあてがってはベッドに投げて、また違う洋服を手に取り体にあてて。
どの服を選んだら幸村の好みそうなコーディネートになるか。神経をすり減らしながら鏡の前にたつ自分の目は真剣そのものなのに、口元だけは相変わらずだらしなくて。名前は一人苦笑を漏らした。
* * *
時間はあっという間に経ち、待ち合わせ時刻10分前となった。
結局、悩みに悩んだ名前の服のコーディネートは白いノースリーブワンピースに水色の薄いカーディガンとなった。シンプルなデザインのネックレスを鎖骨の真ん中できらりと輝かせ、細身の腕時計をつけ、肩にかけるはお気に入りの鞄。
予定していた時間よりも早く支度を終えた名前は家に居ても落ち着かず、早めに家を出て、待ち合わせ場所に着いたのは20分も前だった。
しかし待ち合わせ場所に来てもソワソワと落ち着かず、名前は何度も腕時計を見ては空を眺め、幸村の私服姿を想像して頬を緩ませていた。
「ごめん、待たせたね」
不意に、耳に滑り込んできた声にどきりと心臓が跳ね上がった。
どくどくと心臓を激しく震わせながら、ゆっくりと声のした方へと視線を向けーー名前はくらりと目眩がした。
ーー私服の幸村くん…!!
目元に手をやり、あまりの尊さに名前は本日何度目かの神様への感謝を心の中で述べた。