第5章 青色ドロップ
印象派展とはなんなのか、イメージがまったく浮かばない名前であったが、幸村と一緒ならばきっと楽しい。
そんな意味を込めて強く頷きながら美術館へ行くことを了承した。
心が弾み、楽しくて仕方なかった。名前は満面の笑みを浮かべながら、待ち合わせ時間と場所を述べている幸村の声に丁寧に返事をしては幸福を噛み締めていた。
* * *
時間はたち日曜日になった。名前はこの日曜日という日を、首を長くして待っていた。
電話が掛かってきた金曜日の夜は日曜日が待ち遠しくてソワソワして眠る気にはなれず徹夜で着ていく服のコーディネートを考えていたし、土曜日である昨日は幸せすぎて逆に夢なのでは?なんて思ったりもした。
兎にも角にも、やってきた日曜日。
幸運な事に天気はよく空は青く、雲はもくもくと柔らかそうだし美味しそうなものがうかんでいる。いつもの名前ならば、あぁいい天気だな、程度で終わるのだが…今日は少しだけ違った。
にやける頬をそのままに、神様いいお天気をありがとう!などと両手を合わせ空に向かって心の中で感謝を述べる。傍から見たらおかしな人だが、幸いな事に自室な為彼女を奇人変人でも見るような目を向けるものはいなかった。
美術館デートなのだから、別に雨だろうが晴れだろうが関係ないと言えば関係ないのだが。それでも雨よりかは断然晴れの方がいい。
ーーお気に入りのヒール履けるしね!
にんまりと。これ以上ないというくらいに口元を緩ませ、目尻を垂れさせ破顔させ、心の中でそう呟いた。
壁に掛けてあるお気に入りの時計へと視線をやった。
綺麗な丸の形に象られているであろうその時計の淵には、ぐるりと一周する形で色とりどりの花が散りばめられている。
つい先日、雑貨屋で買ったものだ。花を見ると、幸村を思い出して無意識のうちに買ってしまうのだ。あまり衝動買いはよくないが、それでもどうしても欲しくて買った時計。今では買った自分を褒めたいぐらいだ。
時刻は朝の7時30分。待ち合わせの時刻は13時まだまだ時間にたっぷりと余裕がある。それでも名前は居てもたっても居られず、クローゼットからお気に入りの洋服を全部出してベッドの上に並べた。