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【R18】ドロップス【幸村精市】

第5章 青色ドロップ



「え、な、なに?」
「いや、番号とか交換しとこうと思ってさ。なんかあった時すぐ連絡出来たほうがいいだろい?友達なんだからさ」
「…うん!そうだねっ」

 さらりと述べた丸井の友達という言葉に、名前はほんの少しの間目を瞬かせた後、満面の笑みを浮かべてから大きく頷いてみせた。
 名前は丸井ブン太という人間が、とても好きだと自覚した。
 それは勿論、幸村への好きという気持ちは違うものだ。ワクワクドキドキと弾む心をそのままに丸井へと笑いかければ、丸井も同じように笑い返してきて、素敵な友達が出来た、と名前は心の底から思った。



 * * *

 結局、あの後ファミレスに行って腹ごしらえをしてからカラオケに行って。気づけば18時を過ぎていた。
 時間が経つのがあまりにも早すぎて、時間たつの早いなー、なんてなんの合図もなしに二人声を揃えて言うものだから思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
 帰宅後、シャワーを浴びながら帰り際の丸井の言葉を、名前は思い出した。

「なんでこんなに優しくしてくれるの?」

 純粋な疑問だった。名前としては丸井の優しさにとても救われたし、嬉しかったが…もし、自分が丸井と逆の立場だとどうしただろう?と考えた。
 昨日会ったばかりの奴が、泣いていたからと言って屋上で一緒にスイーツを食べて、その後"楽しませよう会"をしてくれて。もし、自分が丸井の立場だとしたらやらない可能性の方が大きい。
 それは名前に限らず、昨日今日あったばかりの素性の知れない相手ならば誰しもがそうだろう。
 しかし、名前の疑問に丸井は一度だけゆっくりと瞬きをしたあと、いつものようにフーセンガムを膨らませた。相変わらず綺麗な丸だ。

「食いもんくれたから」
「え?」

 さらりと言われた言葉に、思わず鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を零した名前。そんな彼女に、丸井は緩い動作で首を傾げた、至って普通の表情で、言葉を続けた。

「結局、幸村くんに取られちまって食えなかったけど、一度は俺の手に渡ったわけだし。ものくれる奴は大体良い奴だからな」

 そう言って丸く綺麗なフーセンガムを、ぱん、と乾いた音を立て割れば、緩く上がった口角が見えた。

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