第5章 青色ドロップ
先程プリンを食べたばかりだの言うのに、その魅惑のフルーツケーキに丸井と名前は二人して目を輝かせそれを覗き込んで魅入ってしまった。
そんな二人に、店長は些か目を丸くしたがすぐにそれを細め口元を緩めた。
「仲がいいね。丸井くん、この子はもしかして彼女かい?」
「はぁ?!」
「えぇ?!」
さらりと問うてきた店長に、二人は顔を破顔させ間抜けな声を上げた。
そんな二人のリアクションが、あまりにも綺麗に揃ったものだから。店長は目を見開いたあと、口元に手を当て声を上げ笑い出した。
楽しげに声を出して笑う店長の目尻には笑いジワが綺麗に入っているせいか、とても穏やかな笑みに見える。
ーー幸村くんが歳をとったら、こういう穏やかな笑い方しそうだな。
そんな事をぼんやりと思っていたら、ひとしきり笑った店長が、ごめんね笑ってしまって、と謝罪を述べてきた。しかし表情はとても穏やかなもので、見ていてとても落ち着く。
「可愛い二人には後で私から色々サービス品を送ろうかな。あ、勿論このフルーツケーキもサービスだから安心してね」
そう言って店長から渡されたフルーツケーキ。白い皿の底を両手で持って、上からフルーツケーキを覗き込んだ。真っ白でふわふわなホイップクリームに、桃、蜜柑、キウイ、苺が大きめにカットされ散りばめられている。
真っ白な肌に色とりどりの化粧を施されたような魅惑のそのケーキを思わず食い入るように見つめていると、いつの間にか受け付けを終えたらしい丸井が、行くぞ、なんて短い言葉を投げてきた。
丸井の手には二足の靴がぶら下がっており、名前はそれがすぐにボーリングシューズだと言うことに気が付いた。
赤いラインが入った白い靴と、青いラインが入った白い靴。恐らく赤いラインの入ったものが女性もので、青いラインのものが男性用だろう。
それを目にした途端、名前のテンションがまたひとつ高くなった。
靴を持つと申し出たが、ケーキ落とされたら嫌だからいいと真剣な顔をして丸井が言うものだから名前は笑ってしまった。余程このフルーツケーキが大事らしい。