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【R18】ドロップス【幸村精市】

第5章 青色ドロップ



 その顔がなんだか小動物みたいで可愛らしくて、くすくすと笑えば、丸井は眉を寄せ唇を尖らせた。

「なんだよ、変な質問しといて急に笑うなよ」
「あはは、ごめんごめん。なんだか可愛い顔してたから。で、大福好きなの?」
「大福に限らずうまいもんは全部好きだけどよぉ、特別大福が好きって訳じゃねぇよ。つーか、なんでんな事聞くんだよ」

 言いながらまた一口、小さな口で大福に齧りつき大きな動作で咀嚼をする丸井はハムスターのようだ。
 そう思った瞬間、また笑ってしまいそうになったが、なんとかそれを堪えつつ口を開いた。

「いや、シュークリームとかは大きい口で食べてたのに大福はちょこっと齧って食べてたから。好きなのかなーって」
「あぁ、そういう事か。まぁ、好きだけどよぉ…少しずつ食ってる理由はちげぇよ。詰まるからな」
「詰まる?」
「んー。喉に、餅が。こないだ二口で食ったら喉に詰まらせて苦しくてなー。あの苦しさはもう勘弁だぜ」

 そう言って顔を顰める丸井に、しぱしぱと目を瞬かせたあと、名前は堪えきれず吹き出して笑ってしまった。
 腹を抱え、眉を下げ…声を上げて笑う名前に丸井は驚いた表情を零しじっと彼女を見つめている。急に笑い出して驚いたのと、何故笑っているのか分からないと言った表情だ。

「ご、ごめんっ…なんか、お爺ちゃんみたいだなって…ふはっ笑ってごめん…あははは!」
「お爺ちゃ…?!失礼な事言うな馬鹿野郎!つーか、笑いながら謝るな、思ってないだろいお前!」

 お爺ちゃん、と言われ恥ずかしかったのか眉を寄せ顔を赤くして怒る丸井の手刀が名前の額に振り下ろされた。
 僅かな痛みに声をあげるものの、それでも名前の口から笑い声は止まなくて。
 薄ら涙を浮かべて大きな口を開き笑う彼女に、丸井は軽く息を吐いたあと眉を垂らし、名前と同じように大きな口を開け笑い始めた。



 スイーツを食べ終え、屋上で二人他愛もない話に花を咲かせていると、気づけば一限目を半分ほど過ぎた時刻になっていた。
 今日はサボると丸井にLINEで打たれ、サボる事にした名前。このままここに居れば、幸村が昼休みに来てしまうかもしれない。
 そう考えた彼女は、よし、と小さく声を上げるとそっと木製のベンチから腰を上げた。

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