第5章 青色ドロップ
柔らかな生地の上にかけられたチョコレートがなんとも美味しそうで、思わず目を奪われたがすぐに丸井へと視線を移し口を開いた。
「友達からのLINEでね、休み?って聞かれたの」
「あーSHR始まっても居ねぇから心配したんだな」
「うん。多分ね。…けど、どうしようかな」
休むつもりはなかったのだが、ここで丸井とのんびりスイーツを食べていて…この後真面目に授業を受ける気にはなれなかった。
朋子とのトーク画面を開きながら、なんと返していいか分からず唇を尖らせた。自然と寄る眉をそのままに、スマートフォンを睨みつけていると、不意に丸井の手が名前の手からそれを奪い取ってしまった。
「ちょ、ちょっと…!」
思わず声を上擦らせ、取られたスマートフォンを奪い返そうと試みたが、ひょいひょいと軽く避けられ悔しさに眉間のシワを増やせば、ほい、なんてそれを返された。
なんだったんだ?と首を傾げつつもスマートフォンを受け取り、ディスプレイを見て、名前はギョッと目を丸くした。
"今日はサボる事にしたから先生に上手いこと言っておいて!"
朋子とのLINEのトークに、そう綴られた文字を見てしぱしぱと目を瞬かせたあと、文を送った犯人である丸井へとゆっくりと視線を向ければ悪びれた様子も見せず美味しそうにエクレアを食べている。
そんな相手を見て、怒る気力も抜けてしまった。
しかし、サボるのは良くない。名前はスマートフォンを持ち直し、先程丸井が打った文を訂正しようと指を動かしかけたその時、また朋子からLINEが入った。
"名前がサボり?!珍しい~。今度サボる時は私も誘ってよね~!wんじゃまぁ、先生には適当に伝えておく~"
そんな緩い文のあとに、またあの微妙な猫のキャラクターのスタンプが押された。にっこりと笑って手を振っているそのスタンプに思わず吹き出して笑えば、何笑ってんだ?、なんて不思議そうな丸井の声が耳に滑り込んできた。
「見て丸井くん、このスタン…ーーっ!」
けたけたと笑いながらスマートフォンを丸井へと向けようとすれば、思っていたよりも近くに相手の顔が近くにあって思わず息をのみ体を後退させた。