第4章 黄色ドロップ
その言葉に、誰しもが腹を立て名前を友達の輪から外させようとしたのは数しれず。しかし、その度に不二周助はヒーローのように現れ、優しげなスマイルを浮かべながら名前の失言を訂正し、詫びを入れていた。
最後にはきちんと名前自身にも謝罪をさせ、仲直りが一連の流れのようなものだった。
あれから数年が経ち、名前も少しは成長した。
初対面の人には言葉が固くなってしまい、人見知り気質なのはまだ完全になおってはいないが、失礼な言葉を吐くことはなくなった。
それも、不二周助という幼馴染のおかげだ。感謝してもしきれないが…不二に助けられた事は他にも沢山あった。
小学二三年の頃。登校途中、うっかり溝へと片足を突っ込んで泣いてしまった時は一度一緒に名前の家まで帰って綺麗に身支度を整えてから学校に向かい、遅刻の事を一緒にこっぴどく怒られてくれた。
小学六年生の頃。登校し、学校についた名前の太腿に血が滴っていた。初潮というものがきたのだ。なにがなんだか分からず泣き出した名前に、不二は鞄の中に入っていた自分の体操着のズボンを貸してくれた。
その後保健室に行って、保険医から色々話を聞いている最中、不二はずっと保健室の外にいた。
話を聞き終え、着替えやらなんやらもし終えた名前が保健室から出ると不二はいつもと変わらぬ笑みを浮かべ、行こうか、と行って彼女の手を引いて教室まで行った。勿論、教師にはこっぴどく怒られた。
他には、お弁当を忘れた名前に自分の弁当を半分分けてくれたり、体操着を忘れれば体操着を貸してくれたり。
大きな事から小さな事まで、兎に角…不二周助という幼馴染に助けられてばかりだったのだ。どうやらその癖は、中学三年になった今でも抜けきっていないようだ。
幸村の事を一通り話し終え不二の言葉を待っている名前は、内心焦りのようなものを感じていた。
いつもなら、名前が泣き言を言えば優しい声音で彼女が欲しい安堵する言葉をすぐにたくさんくれていたのだから。それが今はどうだろう。
幸村の事を話し終え早数分が経っているが不二は喋らないままだ。電話の向こう側からお笑い芸人の声が聞こえてくる。テレビでも見ていたのだろう。