第4章 黄色ドロップ
『元気だったかい?体調とか崩していない?ちゃんとご飯は食べれているかい?』
久しぶりに聞く幼馴染の声は、やはり落ち着いていて耳触りがよく心地いいものだ。不二周助と幸村精市の声の心地良さは、何処か似ているかもしれない。
名前はスマートフォンを耳に押し当てたまま、自室のドアを開き中へと入った。
リビングから二階にある自室へと移動してきたのだ。そっと後ろ手でドアを閉めて、ベットへと腰掛けた。固くも柔らかくもないベットが、名前の尻をうけとめた。
「相変わらず心配性だなぁ…元気だよ。ご飯もちゃんと食べてる。周助は?」
『僕の方は大丈夫さ。ふふ、心配ご無用だよ』
「そーですかー。あ、サボテンは元気?」
『あぁ、元気だよ。一昨日花が咲いてね、とても綺麗なんだ。後で写真送るよ』
「ありがとう、楽しみにしてる~」
そんな他愛もない話を二人でして、どちらも緩く笑っていた時だった。不二が何かを思い出したように、そう言えば、と言葉を紡ぎ始めた。
『立海のテニス部の人達にあったりしたかい?クラスが多いらしいから流石に同じクラスにはならなかったかな?』
不二の言葉に、何故か幸村とのキスシーンを思い出した名前はみるみるうちに顔を赤くさせるとベットに倒れ込んだ。
ベットの海を泳ぐようにバタバタともがく音が聞こえたのか、なにをしているんだい?、という不思議そうな不二の声が聞こえてきた。
若干引いたようなその声音に、んんっ、と大きく咳払いを落とした名前は何事も無かったかのように口を開いた。
「幸村くんと、同じクラスになったよ」
『幸村と?へぇ、凄いな…クラスが多いのにまさか本当に同じクラスになるなんて。知っているかい?幸村はテニス部の部長なんだよ』
「うん、知ってる。…ていうか、友達だし」
友達、と言いながらも頭に浮かぶのは、初めて幸村にキスされたあの時の光景だった。二人きりの教室で、軽いキスをして…口内に入ってきた舌に自分の舌を撫でられた。
思わず人差し指で自身の唇に触れながら、そっと舌にも触れてみた。指の腹にざらついた舌の感触が伝わってくる。
ーー幸村くんの、舌が…これと。