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【R18】ドロップス【幸村精市】

第4章 黄色ドロップ



「あ、そういや俺も自己紹介まだだったな。俺は丸井ブン太。シクヨロ」

 そう言ってぱちりとウィンクをして見せた丸井ブン太に、名前は苦笑を漏らした。お互いの名前を知らないのに食べ物を要求してきた事が面白かったからだ。
 口元に手をやり、小さく笑いを漏らす名前から丸井へと視線を移した柳生は呆れたような表情と共に溜め息を零した。

「丸井くん…貴方という人はまた食べ物を要求したのですか。しかも名前も知らない女性から」
「んだよ柳生。別にいいだろい。こいつもくれるって快くくれたんだしよ。なぁ?」

 果たしてそれはどうだろうか?と心の中でボヤキながら曖昧に笑って見せた。嫌では無かったが快くとも…また違う。しいていえば、え…この人知らない人からモノを貰っちゃいけませんとか言われなかったのかな?、と名前は内心で思っていた。
 しかし、それを素直に言うわけもなく。首を傾げ、そうだろい?、なんてまた同調を求めてくる丸井に苦笑を漏らしながらゆっくりと頷いて見せた。

「調理部は部活が終わったのですね。お疲れ様です」

 苦笑を漏らしていた名前の耳に、柳生の声がするりと滑り込んできた。
 調理部は調理が終わり、それを食べ…後片付けをしたら時刻など関係なしに終わりなのだとか。それを伝えると、なるほど…そうだったのですね、と柔らかな笑みを柳生は浮かべた。
 柳生の頬にある汗の粒が、夕日を吸い込んでオレンジ色に輝いているのが見え思わず宝石みたいだな、なんてぼんやり思いながら口を開いた。

「柳生くんは風紀委員長をやってるのに、テニス部もやっているのだ…んんっ…やっているだね。大変そう」

 堅苦しいと言われた言葉が口から半分出し、慌てて咳払いで誤魔化し言葉を続ければ、柳生はそんな名前に少しだけ苦笑を漏らしたあと綺麗に首を縦にふってみせた。

「ええ、そうですね。ですがあまり大変だとは思った事がありませんね。どちらもやり甲斐のある事ですから…夢中でやっていますよ」
「へぇ…凄い。私も見習いたいな」

 心の底から感心したように呟いた名前に、柳生は少しだけ照れくさそうにしつつも、凄いことなどありませんよ、と謙遜してみせた。

「なにをしているんだい、お前達」

 と、ふとそこで、もう既に聞き慣れてしまった声が聞こえてきた。

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