第4章 黄色ドロップ
真っ直ぐな瞳が、自分の全てを射抜いているようで名前は少しだけ怖くなった。
友人だと思っていた相手から、自分とは釣り合わなすぎる相手から、キスをされ好きだと言われ…ずっと見ていたいと言われ。嬉しさもあったが、戸惑いの方が大きかった。
スキンシップなのだと、朝はそう言い聞かせたが目前にいる幸村を見て未だそんな考えを持てるほど名前は馬鹿ではなかった。
「ゆ、幸村くん…お昼食べようよ。時間無くなるよ」
掴まれた顎にそっと自分を手を添えて離させながら、名前はそう言葉を紡いだ。視線は極力合わせるようにつとめているが、時たま外してしまう。
そんな名前に幸村は暫し口を閉ざしていたが、そうだね…食べようか、と微笑みいつも三人で座っているベンチに二人で腰掛けた。
いつも少し狭く感じられるベンチが、今日はやけに広く感じて、無意識のうちに一人ぶんのスペースをあけ幸村の隣に座っていると、意地悪だね。お前は、なんて苦笑した彼は距離をつめ座り直した。
僅かな隙間が空いているものの、先程よりもぐっと縮まった距離に名前は無意識のうちに身を固くした。名前の左腕と、幸村の右腕が僅かにぶつかる度に、口の中で悲鳴が漏れ、心臓が飛び出しそうだ。
「名前のお弁当は、いつも美味しそうだね」
膝の上に乗せた母お手製の弁当へと視線を寄越しながら、幸村はそう言葉を投げ掛けてきた。名前は幸村の弁当へと視線をやった。
そういう幸村の弁当も、いつも美味しそうだ。彩豊かで、目で楽しめるし、箱の中に敷き詰められたオカズはどれもヨダレが出そうなほど美味しそうなものばかりだ。
「幸村くんのお弁当だって美味しそうじゃない。お母さんがつくったやつ?」
「あぁ、そうだよ。テニスをしているからね、ちゃんと食べなさいって多めに作るんだ」
「あー確かに結構お弁当大きいよね。男の子って感じがするよ」
「そうだね。俺は…男だから」
そう呟いた幸村の言葉に、深いものを感じ思わず相手を見遣れば意味深に笑いかけてくるだけでそれ以上はなにも言わなかった。
綺麗な手が、綺麗な動作で箸を使い美味しそうなオカズたちを摘み、口に運び咀嚼する。ただそれだけなのに、見惚れてしまうくらい綺麗だ。