第4章 黄色ドロップ
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SHRが終わり、名前は小さく息を吐いた。左隣から発せられるオーラが、重いもので息苦しさから出たものだ。
朝教室に入ってすぐに、彼女と目が合ったがお互いすぐに目を逸らしそのまま席に着いた。
昨日と同じように腹の底から沸き上がる怒りこそ顔を出さなかったものの、彼女の事を少し苦手な人として認識してしまった為かここのせきがどうも居づらかった。
また小さく息を吐き出せば、不意に視線を感じてそちらへと顔を向けた。瞬間、どきりと心臓が跳ね上がった。幸村がこちらへと視線を向けているのだ。
頬杖をつき、名前と目が合ったと分かった瞬間柔らかな笑みを浮かべる幸村に跳ね上がった心臓は一気に鼓動を速めた。ドキドキバクバクととても煩い。
思わず反射的に視線を逸らし、机の中に手を突っ込み一限目の授業の準備を始めた。
そう言えば、朝、珍しく幸村は担任が教室に入ってくるのと同時にやってきた。部活や花の水やりがある為普段からそんなに早いわけではないのだが、チャイムと同時に入ってくる担任よりは些か早く来ている。
それが、今日は少しだけ焦った様子で、それこそ教師と同時にドアを開きなかへと入ってきた。奥側のドアを音を立てずそっとしめた幸村からゆっくりと視線を外し、手前のドアから入ってきた担任へと意識を集中させる。
一番後の席である名前の後ろで、ほんの一瞬幸村が足を止めたのが分かった。いつもなら反射的に振り向いてしまうところだが、それをぐっと堪え前を向いたまま担任に集中する。早く行ってくれ、と願いながら。
あの時、幸村はなぜ足を止めたのだろうか?疑問が頭をもたげたが、考えて答えが出るわけもないので考えることを放棄しノートと教科書を机の上へと置いた。
まだ使い始めて少ししかたっていない教科書とノート。それを指の腹で撫でつけながら、今日は何処をやるんだっけな?、なんて思考を巡らせ顔を上げれば、幸村からの視線が未だひしひしとこちらに向けられているのが分かった。
しかし、それに気付かぬフリをして時計へと視線をやると同時にチャイムが鳴り、それとほぼ同時に一限目の教師がガラガラと派手な音を立てドアをあけ、教室へとはいってきた。
幸村の視線は、なくなった。