第9章 番外編︰どっちが好み?※R18
「雷みたいだね。降り出す前にーー名前?」
カーテンをあけ、雲行きの怪しい空を眺めた幸村は、名前へと視線を移して、目を丸くさせた。
名前がフローリングで丸くなっていたからだ。
幸村の呼びかけに、あからさまにびくりと体を跳ねさせた名前は、わかりやすい程に顔を引き攣らせながらゆっくりとそちらへと視線をやった。
「ご、ごめ…あ、な、なに?!」
「いや、なにはこっちの台詞……どうしたんだい?もしかして、雷苦手?」
「な?!そ、そそそんな訳ないじゃん!だって私中三だよ?!怖いわけなーー」
そんな名前の言葉の途中で、耳を劈くような轟音が振り落とされた。空は一瞬白くなり、その瞬間だけ、世界が止まったかのように感じた。
しかし、そんな世界の止まり方はやめてくれ、と名前は目に薄ら涙をため、ほぼ無意識のうちに幸村へと抱きついていた。
「ちょ、名前…!」
突然の事に受け身を取れず、フローリングへと倒れ込んだ幸村。その上にしっかり名前は乗っかってしまう。
ふと、我に返った名前はなんて事をしてしまったんだ!と頭を抱えたかなったが、不意に幸村の目が真剣味を帯びて、そっと後頭部に手を回されーーそのまま、そっとキスをした。
柔らかく、触れるだけだった唇が、そっと薄く開いてそこから舌が侵入してきた。幸村の熱い舌が、名前の口内に侵入し、奥へと逃げ縮こまる彼女の舌を無理矢理絡めとった。
「ん、んぅ」
舌を絡めるキスが苦手なのか、幸村の舌が名前の舌を撫でるように絡める度に逃げようと舌を動かす。しかし、それを幸村は許さない。
後頭部に回していた手にぐっと力をいれ、更にキスを深くすると少しだけ舌の動きをはやめれば、観念したように名前は自分からもそれを絡めた。
長いキスを終え、そっと顔を離せば、幸村の視線は酷く熱っぽいものだった。まるで、獲物を前にした獣のような、そんな瞳をしている。ぎらぎら、している。
「幸村、くん」
恥ずかしくなって、小さな声で相手を呼べばそれが合図だったかのように幸村の手が動き始めた。