第9章 番外編︰どっちが好み?※R18
幸村の家へと着いた。待ち合わせ場所で幸村と会った時からどきどきと胸を高鳴らせていた名前であったが、幸村の家に着いた途端、それは限界を突破しそうな程だった。
「少し散らかってるけど…ごめんね」
そう言って苦笑した幸村は、そっと自室のドアを開き中へと名前を招き入れた。
「お、お邪魔します…」
小さな声でそう言って、中へと足を踏み入れーー名前の頬は勝手に緩んでいた。
部屋いっぱいに広がる幸村の香り。生活感の感じられる部屋。本棚には絵画の本や、花の本が並んでおり、窓辺には鉢に植えられた花が飾られている。
水色のカーテンに、水色のベッド。
「う、うわぁぁぁ…」
「え、どうしたの、名前」
「あ、ご、ごめん…なんか、ここで幸村くんが生活してるんだって思ったら…感動しちゃって」
「ふはっ…なんだいそれ、変なの」
名前の言葉に照れくさそうに笑ったあと、適当に座るように促し幸村は一度部屋を出ていった。
言われた通り適当な場所で腰を下ろした名前。鞄を下ろし、きょろきょろと辺りを見渡していると、お菓子と飲み物を下げた幸村が戻ってきた。
「麦茶だけど、平気?」
「うん、ありがとう」
名前の隣に腰を下ろし、麦茶の入ったコップを差し出したあと、幸村は軽く息を吐いた。
部屋はエアコンがきいていて、丁度いい快適な温度だ。
それから名前と幸村は、他愛もない話に花を咲かせた。アルバムを見つけ、幸村の小さい頃の可愛さにきゃーきゃー騒ぐ名前に、幸村は嬉しいような、そうでないような…複雑な表情を浮かべていた。
そんなまったりとした時間を過ごし、あっという間に時刻は13時から18時少し前となった。
「…そろそろ帰らなきゃ」
「そっか、もうこんな時間だもんね。送っていくよ」
そう言った幸村の言葉に、ありがとう、と礼を述べた瞬間ーー窓の外から唸り声が聞こえてきた。
ぎくり、と名前の体が固まる。それは紛れもなく、空から聞こえる雷の音で。何故、今から帰ろうというこのタイミングで鳴り出すのか、と名前は内心半泣きになっていた。