第8章 ドロップス
『僕がさ、"ドロップみたいな恋ってどんな恋?"って聞いたら、君は楽しそうにこう言ったんだ。
"桃色のドロップは出会いのドロップ、
白色のドロップは始まりのドロップ、
黄色のドロップは恋が色づき始めたドロップ、
青色のドロップは悲しいドロップ、
緑色のドロップはまた新たな恋のドロップ、
赤色ドロップは色んな恋が詰まったドロップ"
…ねぇ、名前。君は、そんなドロップみたいな恋が出来たかな?』
優しく問いかけてくる不二。その言葉ひとつひとつを、昔の自分と重ねながら、名前はしっかりと噛み締め、
「うん!出来たよ、周助。ドロップみたいな、素敵な恋、出来た。私今ね、凄く幸せ」
そう言って、ぎゅっと幸村の手を握りしめれば、同じように握り返してきた。
それが凄く擽ったくて、名前は幸村の顔を見れないまま、照れたように笑う。
『名前。じゃあ、最後に僕の恋の話を聞いてくれるかい?』
「えっ、周助の?!聞く!聞くよ!初めてだね、周助がそういう話するの」
『ふふ、そうだね…君だけには言わないようにしていたから』
「えっなにそれ意地悪!私は周助に色んな事話してたのに!」
『……名前』
「な、なに?」
不意に、やけに甘くて優しい声の不二の声に、名前は目を瞬かせつつその先の言葉を催促した。
ガードレールに腰掛けた幸村と名前の影が、夜に飲み込まれて見えなくなった。
まるで二人で夜に飲み込まれたようだった。
『僕はね、君の事が好きなんだ』
「え」
不意に言われた不二の言葉。そのすぐ後に、電車が通ってがたがたと音をたて走り抜けていく。そんな電車の音が、気にならないほど、名前には不二の言葉に驚いていた。
驚き声が出せないでいる名前に、不二の言葉は続く。
『けどね、それは君と初めて出会った時から。僕の初恋かな。けど、初恋は実らないって言うよね。…ふふ、それって、臆病になってしまうからかな?僕はね、変に名前との関係を崩すくらいなら、幼馴染として、君のヒーローとして傍に居たかったんだ』
「…周、助」
『弱虫だよね。かっこ悪いよね。けど、それでも名前の傍に居たかったんだ』
言葉を紡ぐ不二の言葉は震えていた。泣いているのだろう。