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【R18】ドロップス【幸村精市】

第8章 ドロップス




 幸村の部活が終わり、二人は夕方から夜へと変わろうとしている空を見上げたあと、のんびりと肩を並べ帰路へと着いている。
 気恥しいのか、少しだけ距離をあけて。けど、歩幅きっちり互いに合わせて歩く。

「…幸村くん」
「なんだい?」
「…ごめんね、色々」
「それを言うのは俺の方だよ。…傷つけて、ごめん。もう、絶対そんな事しないから」
「ふふ、ありがとう」

 そんな会話をしていると、不意にスマートフォンが震えた。幸村に一言断りを得てからそれをポケットから取り出すと、着信は不二からのものだった。

 ーー周助…。

 背中を押してくれた、小さい頃からの、自分のヒーロー。
 電話なら、あとでも出来る。それなのに、今出なければいけない気がして、幸村にもう一度断りを得てからそっと通話ボタンを押し、耳にあてがった。

『もしもし』

 優しい幼馴染の声が聞こえてきた。その声に、やはり酷く安堵する。
 名前は同じように、もしもし、と返せば不二は楽しげに笑い声を漏らした。

『良かった、上手くいったみたいだね』
「え、なんで分かるの?」
『ふふ、幼馴染を舐めないでほしいなぁ』
「あはは、本当に叶わないな、周助には」

 そう言って二人は少しだけ笑ったあと、不意に不二が言葉を紡ぎ始めた。

『ねぇ、名前。君は覚えてるかな?昔、君と僕がよく食べてたもの』
「よく食べてたもの?あぁ、あの缶に入った飴のこと?」
『そう。缶に入ってて、色んな色で、色んな味をした、あのドロップ』
「うん。覚えてるよ。二人でよく食べたよね。…それが、どうしたの?」

 そんな話をしていると、幸村が歩道近くのガードレールにそっと腰を下ろした。
 電話を握る手とは反対の手を握られ、引き寄せ、そっと自分の隣に腰を下ろさせた幸村を見て、名前はほんのり頬を染めながら、不二の言葉を待つ。

『君はね、言ったんだ。夕方の公園で、二人でブランコに乗っている時。"私はドロップみたいな恋がしたい"って』

 昔を懐かしむようにそう言った不二の言葉に、名前はすぐにその時の事を思い出した。
 学校の帰り道。いつものように公園で道草くって、ブランコに二人で乗っていた時。

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