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【R18】ドロップス【幸村精市】

第8章 ドロップス



 "貴方の笑った顔が一番好き"

 その言葉に、名前は嬉しさがこみ上げ、堪えていた涙が一気に溢れ出した。
 その言葉は、幸村や丸井の笑顔を見た時、ひそかに言われたいとーーいつか、誰か言ってくれないかと、思っていた言葉で。
 それを、自分を好いてくれた、大好きな友人から聞くことが出来て、名前は嬉しさから涙が止まらなかった。

「柳生、く…あり、がと…ありがとう…こんな、私を…好きに、なってくれて…」

 気づいたら、泣きながらそう言葉を紡いでいた。
 涙でぐしゃぐしゃな顔で、何度も何度も礼を言えば、柳生も同じように涙を流し、何度も礼を述べた。

「名前さん、幸せになってください。それが、私のーーいえ、私と、丸井くんと、須野さんからの、願いです。貴方の笑顔を好きな方は、他にも沢山居ます。ですから、前に進み続けてください」

 そういった柳生の言葉に、名前は上手く言葉が出せず、代わりに何度も何度も頷いた。
 そんな彼女を見て、苦笑を漏らした。

「名前さん、笑ってください」
「っ…う、ん!」
「そうです。その、笑顔が…私は、大好きです」
「あり、がとう…」
「名前さん。素敵な笑顔と、素敵な気持ちをありがとうございました」
「っ…柳生、くん…何度も、助けてくれて、支えてくれて、ありがとうっ…」

 最後に一度だけ、強く手を握りしめた二人はそっと手を離した。涙でぐしゃぐしゃの顔でお互い笑って、自分の目指す場所へと行くため、二人は歩き出した。
 柳生の微かな泣き声を、背中に感じながら、名前も声を押し殺して泣いてーー幸村の元へと、一歩一歩確実に歩を進めていく。



 テニスコートへと来た。正面玄関を出た瞬間から走ってテニスコートまで来たせいで、少しだけ息が切れてしまっているが、そんな事気にもせず、名前はフェンスを両手で握りしめ、幸村を探した。
 そして、すぐに見つかる大好きな人の姿。

「幸村精市くん!!」

 気づいたら、叫んでいた。
 テニスコートにいる部員達や、下校途中の生徒達の視線が一気に名前へと集まるが、そんな事気にならなかった。

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