第8章 ドロップス
「…真っ直ぐ、だけど、不器用に相手を想う人」
震える声で、名前はそう言葉を紡ぎ終えた。
その言葉を聞いた不二は柔らかく笑った。電話越しなのに、何故か彼の柔らかな笑みが浮かんだのだ。
『名前、君にはまだ話してなかったけれど、この4人の話には続きがあるんだ』
「え、続き?」
『そう、続き。実はね、これは同じタイプの人同士じゃないと、結ばれないんだ』
「え…なにそれ、どういうこと?」
意味がわからない、と言った様子で眉を寄せた名前に、不二はやれやれ、と言った様子で軽く息を吐いたあと、いつものように柔らかく笑った。
『つまり、真っ直ぐだけど不器用に相手を想う人だったら、その想っている相手も同じように、真っ直ぐだけど不器用に相手を想う人じゃないと結ばれないんだって。まぁ、あくまで人から聞いた話だけどね』
「えっ、そ、そうなの?ど、どうしよう…私自分がどれなのか分からない…」
『ふふ、安心しなよ。君は幸村と結ばれるよ』
「えっ…な、なにをそんな、」
『だって、僕からしたら名前は幸村のこと、真っ直ぐだけど不器用に相手の事を想ってるように見えるから』
優しい優しい声音でそういった不二に、名前の目は大きく見開かれた。涙が止まり、声が出なくなった。それくらい、不二の言葉は名前にとって驚きをもたらした。
自分では分かっていなくても、他人から見たら、そう見えるのか、と。
『だから名前、自信をもって、幸村の所へいってごらん。じゃないと、背中を押してくれた丸井が可哀想じゃないか。それと、君は少し自分の気持ちに素直になった方がいいよ』
「自分の、気持ち?」
『そう、気持ち。名前は今、誰に会いたい?』
「…幸村、くん」
『うん。じゃあ、幸村に会ったら、なにをしたい?』
「好きって…っ、好きって…言いたい」
『うん。偉い偉い、よく素直に言えたね。なら、次は行動に移そうか。名前、いい?電話を切ったら、すぐに幸村のところへ行くんだよ』
優しいが、どこか強くも感じた不二の言葉。
名前は彼の言葉に強く強く背中を押されたきがした。
『名前、君はーー自分の手で幸せを掴んで』
そう切なげに言った不二の言葉を最後に、電話はきれてしまった。