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【R18】ドロップス【幸村精市】

第8章 ドロップス



「言葉では否定しても、心が否定しきれてねぇんだよ、名前は。…けど、んな事付き合う前から分かってたし、付き合った後なんてもっと、痛いくらいそれが分かった。…でも、俺はそれを見ないふりしてた。そうすれば、お前は優しいから俺の隣に居てくれるって思ってたから。……けど、今日、お前が倒れた時…俺と幸村くんが駆け寄ってーーお前、無意識だろうけど幸村くんの名前呼んで、幸村くんに手差し出したんだぜ」

 ぽつりぽつりと紡ぐ丸井の言葉に、名前の目は少しずつ見開かれていく。信じられない、といった様子で。
 何故、体育教師や丸井ではなく、幸村が自分を保健室まで運んだのか、そこでやっと理解した。
 理解した。だからといってすんなりそれを受け止められるほど名前の心は強くはなかった。嘘…と小さく呟き口に手をあてる彼女に、丸井は更に言葉を続けた。

「幸村くんの名前呼んで、幸村くんに手出してさ。幸村くん、少し驚いてたけどお前に手差し出そうとした俺制してすぐにお前を抱き上げて、そのまま保健室連れてったんだ。それ見て、あ…俺、勝てねぇや、って思っちまってさ。…だから、名前」
「………」
「お試し終了、って事で」

 ぼろぼろと涙を流しながらも、笑ってそう言った丸井に、名前も気づけば大粒の涙を流して泣いていて。
 相手の言葉を受けいられず、大きく頭を振った名前は嫌だと大きく声を張り上げた。

「嫌、嫌だよ丸井くんっ…私、丸井くんの事好きだよ…!傷つけたならごめんっ…謝るから、もう、しないから…!別れるなんて言わないで」
「…名前、落ち着けって」
「落ち着けるわけないじゃん!お願いだから、私っ…」
「っ…!」

 嫌だとすがりついて泣く名前に、丸井は眉を寄せ、彼女の体を近くの机に押し付け押し倒した。
 がたん、と大きく音を立て寝かされた机の上。自分を見下ろしてくる丸井の目はぎらついていて獣のようだった。

「ま、丸井…くん?」

 初めて見るそのぎらついた獣のような瞳に、名前は声を上ずらせ相手の名前を呼んだが、返事はかえってこなかった。
 不意に、丸井の手が名前の胸に触れ、形を確かめるように動き始めた。

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