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【R18】ドロップス【幸村精市】

第7章 赤色ドロップ



「自分勝手で我儘で、困ったらすぐに泣いて…自分でも、自分が嫌になるっ…けど、私、こんな事、はじめてでっ…こんなに、人をーー」
「大好き、なんですね」
「っ……」
「その人の事が」
「……うん…好き。好き、好き、っ…大、好き」

 柳生の言葉に、名前は素直に頷いた。
 自分の中だけにしまっておいた、幸村への大好きという気持ちを、はじめて誰かに表した。
 柳生にとっての大好きが、名前の描いている大好きと同じなのかは分からなかったが、それはどうでもよかった。ただ、大好きだと口にした途端、幸村への好きがより加速した気がした。
 名前は自分の手で顔を覆い、ごめんなさいと何度も何度も呟いた。そこにいる筈もない相手に謝るように、何度も何度も謝る名前に、柳生はそっと口を開いた。

「苗字さん」
「…な、に?」
「謝れるのなら、謝りましょう。自分が悪いと思ったのなら、それをしっかり口にして誠心誠意、謝りましょう」
「…柳生くん」
「話したいと願うのなら、素直にその気持ちを吐露しましょう。それで怒られたら、また謝りましょう。それでも口をきいてくれなかったら、手紙に気持ちを書き出してそれを渡しましょう。自分の思ってる事を素直に文へとしたためましょう。それでも駄目でしたら、私がまた話を聞きますからその時また打開策を考えましょう。まず苗字さんが起こさなければいけないことは行動です。人は心に強く響いたことは決して忘れません。楽しかった事は勿論、辛かった事もです。苗字さんの心には今辛い事が大きく大きくのしかかったまま行動を移さないせいで、潰れかけています。それでしたら、行動を移さないで潰れるよりも行動を移してみた方が事の行方が変わるかもしれません」

 柳生の落ち着き払った声が、名前の耳にするすると入り込んでくる。
 雨の音も、雷の唸り声も気にならないほどに、名前は柳生の言葉に集中していた。
 
「…なんて事を言っていますが、最後にどう行動するかは苗字さん、貴方です。私は、貴方の選ぶ道を信じます。…ただ、その選んだ道の先に、必ず貴方の笑顔がある事を、私は心から願っています。そうすれば…いえ、そうなれば、私は多くを望みません」

 ゆっくりと言葉を紡ぎ終えた柳生はそっと口を閉じた。

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