第7章 赤色ドロップ
「おい柳生、今名前の胸の谷間見てなかったか?」
名前を自身の腕の中に閉じ込め、ジト目を向けてくる丸井に、柳生はさらに顔を真っ赤に染め上げ勢いよく顔を左右に振った。同じように手も左右に振られている。
「み、見ていません!断じて!」
「嘘つけ。チラ見してたろい。むっつりめ」
「言葉を謹んでください!丸井くん!」
柳生は赤い顔のまますくりと立ち上がると、ぎごちない動きで川へと入っていった。
浅いと須野の父親が言っていたが、それでも柳生の膝小僧あたりまで浸かっているのを見る限り充分遊べそうだ。踝くらいの川だったらどうしようかと思っていたのだ。
そんな事を考えていた名前の耳に、不意に吐息がかかり、びくりと体が自然と震えてしまう。丸井の吐息が、耳にかかったのだ。
「ま、丸井くん…もういいんじゃないかな?」
今更ながら、露出の多い水着姿で丸井に抱きしめられているのだと理解した名前は恥ずかしくなり、か細い声でそう言葉を投げてみたが彼の体は離れなかった。
それどころか抱きしめる力がいっそう強くなり、戸惑ってしまう。どうしたものか、と悩んでいると、不意に丸井の口がそっと開いた。
「すげぇ、似合ってる」
「え?」
「水着。すげぇ可愛い。独り占めしたいくらいに」
「ま、丸井くんてば…恥ずかしいよ」
「なぁキスしーー」
「不純異性交遊禁止ですのーーーー!!!」
丸井の言葉を遮るようにして、須野の元気な言葉と共にビーチボールが丸井の頭へと直撃した。
ぼんっ、と鈍い音をたて当たったそれに、うぉ!、なんて間抜けな声をあげた丸井がおかしくて名前は笑ってしまった。
それが恥ずかしかったのか、丸井は須野を睨みつけたあとビーチボール片手に彼女を追いかけ回し始めた。
叫び悲鳴を上げながら川へと入る須野を、追いかけ回す丸井と、そんな丸井が飛ばした水を全身で受けた柳生。
わーわーぎゃーぎゃーと叫ぶ三人はとても面白くて、名前は腹を抱えて笑った後自分も川へと足を踏み入れた。