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【R18】ドロップス【幸村精市】

第3章 白色ドロップ



 左隣の人と机をくっつけた事により、がたりと音をたてれば近くにいた生徒達が物音に気づき反射的にこちらへと視線を寄越したがすぐに前を向いた。
 しかし、ただ一人視線を寄越したままの者がいた。

 ーー幸村くん、こっち見てる。

 名前は送られる視線に気づき、幸村精市と視線を絡ませればパクパクと口パクで何か言っている。
 何を言っているのか分からず、小さく眉を寄せ首をかしげれば軽い溜め息を吐いた幸村は視線を前へと戻してしまった。
 教科書を忘れてしまったことをきっと呆れているんだろうな。なんて思いながら苦笑を漏らせば、とんとん、とノック音が耳に滑りこんできた。
 反射的にそちらへと視線をやれば、シャーペンを握った左隣の女の子がノートを軽くそれで小突いていた。
 名前の視線が自身に向いたことに気がつくと、彼女はシャーペンを握り直しサラサラとノートの上にそれを走らせた。自然と目がその動きを追っていく。

 "幸村くんと仲がいいんだね"

 女の子らしい可愛らしい丸文字で書かれたそれに、名前は特になにを思うでもなく素直にこくこくと頷いてみせた。
 素直に認めるのは恥ずかしかったが、自分の中では幸村ととてと親しい仲だと認識しているので頷く事に迷いはなかった。
 書き込まれた文を読み、素直に頷く名前を見て更に文字を綴り始めた。
 ノートの上を滑るシャーペンをぼんやりと眺めていた名前であったが、ノートに書き込まれていく文字を読み徐々に顔が険しくなっていく。

 "幸村くんて何考えるか分かんないから怖くない?"
 "いつも笑ったりしてるだけでなんか不気味なイメージ。顔はいいから眺めるだけならいいけど(笑)"

 好き勝手に書かれたノートの文字に、名前は目を見開いた。
 読み間違いではないか?と何度も何度も読み返してみたが、文字が変わるなんて事は当然ながらなかった。
 瞳を揺らし、自然と拳を握りしめれば隣の彼女は"どうしたの?震えてる"と文字をノートに綴った。

 ーーどうしたの?じゃないでしょ…人の友達侮辱しておいて…。

 怒りに震え、思わず口を開いたが、それと同時にドアが開く音が聞こえキュッと唇を噛み締めた。

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