• テキストサイズ

【R18】ドロップス【幸村精市】

第3章 白色ドロップ



 * * *

 昼食をとりおえ、三人で教室へと戻ればクラスメイトたちの殆どが席につき授業の準備をしていた。
 名前は慌てて自分の席につき、弁当箱を机の横に引っ掛けたあと、机に手を差し入れた。ゴソゴソと狭い部屋を漁るように手を動かし、教科書をつかみ半分ほど顔を出させ確認したが違う教科のものだった。
 それを数回繰り返してから、はたと気がついた。
 自分の持っている教科書が、全て明日の授業のものだと言うことに。
 午前の授業のものは明日もあるため、気が付かなかったのだ。机の中にある教科書と明日の授業科目一覧を頭の中で照らし合わせーー体が脱力してしまった。
 何故自分はこうも間抜けなのか。幼馴染の不二周助にも口を酸っぱくして言われた事を思い出す。

 "名前、予習復習はきちんとしないとね?自信があってももう一度って確認しないと"

 そう言いながら困ったように眉をハの字にする幼馴染はもう何度見たことだろうか。
 苗字名前は頭がすこぶるいいが、頭が弱いところがあり凡ミスなどが多い。勉学では間違いなどした事は1度もないが、人間としての私生活でいろんなヘマをしてしまう事がある。
 それはここ、立海大付属中に来てからも既に何度かしてしまっている。
 弁当をきちんと持ってきたのに鞄を家に忘れたり、教室を間違え、それに気づかず席につこうとしたら止められたり。その時は赤い髪が特徴的な男の子に、お前間抜けな奴だな~しっかりしろい、なんて笑われてしまい顔から火が出そうだった。
 名前はひんやりとした机に頬を寄せたまま、深い溜め息を吐いたあと、ゆっくりと体を起こし左隣へと視線をやった。

「あの、良かったら教科書を見せてほしい」
「教科書?あー…いいよ」
「すまない。ありがとう」

 今更だが、名前は初めて話す人に高確率で堅苦しい話し方になってしまう。
 武士のような口調になる訳ではないが、10代の女子にしてはあまり使わない言葉を使う。しかしそれは、慣れてしまえばすぐに抜けていく。
 名前はその事に気づいたのは、先日幸村に指摘されたからだった。それまで自分自身では普通に話していたつもりだったのだ。

/ 291ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp